インクレディブル・ハルク
The Incredible Hulk / 2008年
『インクレディブル・ハルク』はMCU第2作であり、 自分の中に生まれた怪物ハルクを消そうと逃げ続けるブルース・バナーが、最終的にその力を「恐れるもの」ではなく「自分が使う力」として受け入れ始める物語 です。
MCU公開順では『アイアンマン』に続く第2作、フェーズ1に位置します。物語の大部分は『アイアンマン2』『マイティ・ソー』と近い時期に起きていると整理されています。
本作では、
- ブルース・バナー / ハルク
- サディアス・“サンダーボルト”・ロス
- ベティ・ロス
- エミル・ブロンスキー / アボミネーション
- サミュエル・スターンズ
- スーパーソルジャー計画
- ガンマ線研究
- スターク・インダストリーズと米軍の関係
など、後のMCUへ長く残る要素が登場します。
後年のMCUでは、本作で残された人物や伏線が長い時間をかけて再登場しています。
詳しいあらすじ
1. ブルース・バナーに起きた実験事故
科学者 ブルース・バナー は、恋人で同僚でもある ベティ・ロス とカルバー大学で研究をしていました。
研究を依頼していたのは、ベティの父でアメリカ軍の将軍 サディアス・“サンダーボルト”・ロス です。ブルースには放射線抵抗を高める研究だと説明していましたが、ロスの本当の目的は第二次世界大戦時の スーパーソルジャー計画を再現すること でした。
ブルース自身を使った実験は失敗し、大量のガンマ線を浴びた彼は、怒りや興奮で心拍数が上がると巨大な怪物 ハルク へ変身する身体になります。最初の暴走では研究施設が破壊され、ロスやベティも負傷しました。
ブルースは自分を危険な存在だと考えて姿を消しますが、ロスはハルクを軍事利用できる力と考え、追跡を続けます。

2. ブラジルでの潜伏生活
数年後、ブルースはブラジルのリオデジャネイロに身を隠し、瓶詰め工場で働いていました。
彼は呼吸法や格闘術を学び、心拍計を使いながら怒りや興奮を抑えています。目的はただ一つ、ハルクへ変身しないことです。
同時に、インターネット上では自分を 「ミスター・グリーン」 と名乗り、正体不明の研究者 「ミスター・ブルー」 と連絡を取りながら治療法を探していました。
この時点のブルースにとってハルクは、自分の一部ではなく消すべき病気です。彼が望んでいるのは力を使うことではなく、事故以前の普通の身体へ戻ることでした。

3. 一滴の血から居場所が発覚する
工場で作業中、ブルースは誤って指を切り、一滴の血を飲料ボトルへ落としてしまいます。
問題のボトルはそのままアメリカへ出荷され、それを飲んだ男性がガンマ線の影響で体調を崩します。軍は異常な血液反応と流通経路から、ブルースがブラジルにいることを突き止めます。
この出来事で、危険なのはハルクへの変身だけでなく、ブルースの血液そのものだと分かります。変身せず静かに暮らしていても、彼の身体自体が追跡される原因になっているのです。
4. エミル・ブロンスキーによる追跡
ロスはブルース確保のため、特殊部隊をブラジルへ送ります。その中心人物が エミル・ブロンスキー です。
ブロンスキーは経験豊富な兵士で、最前線で戦うことに強い執着を持っています。この時点ではハルクの存在を知らず、ブルースを通常の逃亡者だと思っていました。
部隊が工場へ踏み込むと、ブルースは必死に逃走します。しかし軍と工場の男たちに追い詰められ、ついにハルクへ変身。通常火器をものともせず部隊を壊滅させます。
ブロンスキーは圧倒的な力を目撃しますが、恐れるよりも魅了されます。ここから彼は任務よりも、 自分もハルクのような力を得たい という欲望へ傾いていきます。

5. スーパーソルジャー計画
作戦後、ブロンスキーはロスへ説明を求めます。
ロスは、ブルースの実験が第二次世界大戦の スーパーソルジャー計画を再現する試み だったことを明かし、さらに保管していた強化血清をブロンスキーへ提示します。
ブロンスキーは自ら投与を受け、速度、筋力、反射神経、回復力を大きく高めます。
この場面でブルースとの対比が明確になります。ブルースは望まずに得た力を消そうとしているのに対し、ブロンスキーは危険を承知でより強い力を求めています。
この違いが、最終的にハルクとアボミネーションの違いにつながります。

6. アメリカへの帰還とベティとの再会
ブルースは治療に必要な過去の研究データを求め、アメリカへ戻ります。
目的地はかつて所属していた カルバー大学 です。しかし構内へ忍び込んでも、自分が残したデータはすでに消されていました。
そこでブルースは、離れ離れになっていた ベティ・ロス と再会します。ベティには現在、精神科医の レナード・サムソン という恋人がいましたが、ブルースへの思いは残っていました。
ベティは密かに保管していた実験データをブルースへ渡します。
ベティはブルースにとって事故以前の人生とつながる存在であり、同時に「そばにいれば彼女を危険へ巻き込む」という葛藤の象徴でもあります。

7. カルバー大学での戦闘
ブルースの帰還を知ったロスは、軍を率いてカルバー大学を包囲します。
追い詰められたブルースは再びハルクへ変身。軍は通常兵器に加え、 スターク・インダストリーズ製の音響兵器 を投入し、強烈な音波で一時的にハルクを抑え込みます。
これは『アイアンマン』との小さな接続で、スターク社が米軍へ高度な兵器を供給している世界であることが分かります。
一方、強化されたブロンスキーは人間離れした動きでハルクへ接近し、真正面から挑発します。しかし力の差は圧倒的で、ハルクの一撃で重傷を負います。
スーパーソルジャー血清でもハルクには届かないと知ったことが、ブロンスキーのさらなる力への執着を強めます。

8. ベティを守るハルク
大学での戦闘中、ベティはハルクの近くへ向かいます。
軍の攻撃で彼女が危険にさらされると、ハルクは身を挺して守り、そのままベティを連れて逃走します。
ハルクは単なる暴走する怪物ではなく、理性や言語能力を大きく失ってもベティへの感情は残っています。山中で嵐に遭った時も彼女を守ります。ブルースとハルクの感情が完全には切り離されていないことを示す重要な描写です。

9. ニューヨークへ向かう二人
人間の姿へ戻ったブルースは、ベティとともに軍から逃れます。
二人が目指すのは、これまで治療研究を手伝っていた「ミスター・ブルー」のいるニューヨークです。
逃亡生活の中で二人の関係は戻りかけますが、ブルースには大きな問題があります。感情や心拍数の上昇が変身につながるため、恋人と普通に過ごすことすら危険でした。
ハルク化は戦闘時だけの問題ではなく、ブルースの日常や人間関係そのものを奪っています。彼が治療を求める理由には、ベティと普通に暮らせる人生を取り戻したいという願いもあります。
10. ミスター・ブルーの正体
「ミスター・ブルー」の正体は、グレイバーン大学の研究者 サミュエル・スターンズ でした。
スターンズはブルースから送られたデータを使い、ハルク化を逆転させる可能性のある薬を開発していました。
ブルースは自ら実験台となり、意図的に変身を起こした状態で薬を投与されます。激しい変身の途中で薬が作用し、ブルースは人間の姿へ戻ります。
一見すると治療は成功したように見えますが、スターンズは「一度の変身を止めただけなのか、根本的に治ったのかは分からない」と説明します。
ブルースが求め続けた治療は目の前まで来ましたが、まだ完全な解決ではありませんでした。

11. 培養されていたブルースの血液
スターンズは、ブルースから送られた血液を研究室で大量に培養していました。
彼はその細胞に大きな医学的可能性を見ていますが、ブルースはすべて破棄するよう要求します。
ブラジルでは一滴の血だけでも人間へ異常を起こしました。それが大量に存在し、軍や悪意ある人物の手へ渡れば、さらに大きな被害につながる可能性があります。
スターンズは医学的可能性を、ロスは兵器価値を見ます。対してブルースは実際の被害を知る立場から、その危険性を止めようとします。ここに本作の 科学と責任 というテーマがあります。

12. ブロンスキーの異常な回復
大学でハルクに吹き飛ばされたブロンスキーは、本来なら再起不能の重傷を負っていました。
しかし強化血清の影響で驚異的に回復し、再び任務へ戻ります。
ただし精神状態には変化が見られ、彼の目的はブルース確保よりも「ハルクと同等の力を得ること」へ変わっていました。
ロスの部隊がスターンズの研究室へ踏み込み、ブルースとベティを拘束すると、ブロンスキーは一人その場へ残ります。
そしてスターンズへ、ブルースの血液を自分に投与するよう要求します。
すでに別の血清で強化された身体へ何が起きるか分からないと警告されても、ブロンスキーは止まりませんでした。

13. アボミネーション誕生
ブロンスキーはブルースの培養血液とガンマ線を自らの身体へ使用させます。
その結果、肉体は巨大化し、骨格まで変形。 アボミネーション へ変身します。
アボミネーションはハルク級の怪力を持ちながら、ブロンスキーの知性や攻撃性をかなり残しています。
ハルクが望まない事故によって誕生したのに対し、アボミネーションはブロンスキー自身が力を求めた結果として生まれた怪物です。
変身直後、アボミネーションはスターンズを吹き飛ばします。倒れたスターンズの額の傷へブルースの血液が入り、頭部に変化が起こり始めます。
この場面は、後の サミュエル・スターンズ / リーダー へつながる長期的な伏線となります。

14. ハーレムを破壊するアボミネーション
アボミネーションはニューヨークのハーレムへ出て、車両や建物を破壊しながら暴れ始めます。
軍の兵器では止められず、被害は急速に広がります。
その頃、ブルースとベティはロスのヘリで移送されていました。アボミネーションの出現を知り、ブルースは自分なら止められるかもしれないと考えます。
ここで彼は、物語の序盤とは正反対の決断をします。
ずっとハルクにならないために逃げてきたブルースが、今度は市民を守るため、 自分からハルクになることを選ぶ のです。
これが本作におけるブルース最大の転換点です。

15. 自らハルクになる決断
ブルースはロスに自分を現場へ行かせるよう求め、ヘリコプターから飛び降ります。
スターンズの治療で変身できなくなった可能性もありましたが、それでも地面へ向かって落下します。
一度は人間の姿のまま激突しますが、直後にハルクが出現します。
ここでブルースは初めてハルクを「消すべき病気」ではなく、 誰かを救うために使える力 として選択します。完全に制御できてはいませんが、逃げるだけだった男が自分の中の怪物を必要として戦場へ戻ったことが、後の『アベンジャーズ』につながります。

16. ハルク対アボミネーション
ハーレムでハルクとアボミネーションの激しい戦闘が始まります。
アボミネーションはハルクに匹敵する体格と力を持ち、さらにブロンスキーの戦闘経験も残しているため、ハルクは苦戦します。
しかし戦いが続くほどハルクの怒りと力も増し、周囲の物を即席の武器として使いながら反撃します。
最後は巨大な鎖でアボミネーションの首を締め上げ、殺せるところまで追い込みます。
しかしベティの声を聞いたハルクは手を止め、アボミネーションを生かしたままロスたちへ引き渡します。
ここでも、ハルクの中にブルースの感情や判断が残っていることが示されます。

17. ベティとの別れ
戦いの後、ハルクはベティを見つめます。
二人は再会し、一度はともに逃亡しましたが、ブルースがそのまま彼女と暮らせる状況ではありません。軍の追跡も、ハルクの危険性も完全には消えていませんでした。
ハルクはベティのもとを離れ、再び一人で姿を消します。
ブルースは普通の人生へ戻れませんでしたが、序盤のようにハルクを抑え込むだけではなく、自分の意思でその力を使うところまで変化しました。

18. ハルクを制御し始めるブルース
その後、ブルースはカナダのブリティッシュコロンビア州に身を隠し、再び瞑想を続けています。
ただし冒頭とは意味が変わっています。
最初のブルースは「変身しないため」に心を落ち着かせていました。しかしラストでは、瞑想中に目が緑色へ変わり、ブルース自身がわずかに笑みを浮かべます。
これはハルク化を完全に治すのではなく、 自分の意思で変身を引き出し、制御する方向へ進み始めた ことを示唆しています。
『アベンジャーズ』ではブルース役がエドワード・ノートンからマーク・ラファロへ交代しますが、キャラクターとしては同一人物です。本作の出来事もそのままMCUの正史として続いています。

ポストクレジットシーン
事件後、酒場で一人飲んでいるロス将軍の前に、 トニー・スターク が現れます。
『アイアンマン』の主人公が別作品へ直接登場する、MCU初期を象徴するクロスオーバーです。
トニーはスーパーソルジャー計画が過去に凍結されたことには理由があると指摘し、さらに 「チームを作っている」 ことを示唆します。
これは『アイアンマン』でニック・フューリーが語ったアベンジャーズ計画に続く描写です。
後のマーベル・ワンショット『相談役』では、この訪問に「アボミネーションをアベンジャーズへ加える案を阻止するため」という補足も加えられています。
本編では比較的独立していた『インクレディブル・ハルク』が、最後に明確に『アイアンマン』と同じ世界へ接続されます。

主要キャラクターまとめ


ブルース・バナー / ハルク
本作の主人公。
ガンマ線研究の事故によって、怒りや強い興奮で心拍数が上がるとハルクへ変身する身体になった天才科学者です。
序盤ではハルクを完全な病気・呪いとして考え、軍から逃げながら治療方法を探しています。
しかしアボミネーションが市民を襲った時、自分からハルクになることを選びます。
本作の成長は、 「ハルクを消そうとする男」から「ハルクの力を自分の責任で使おうとする男」への変化 です。
『アベンジャーズ』以降はマーク・ラファロが演じ、ブルースとハルクの共存はさらに長いテーマとして続いていきます。

ベティ・ロス
ブルースの元恋人であり、科学者。サディアス・ロスの娘でもあります。
実験事故でブルースと引き離されましたが、彼への思いは残っており、再会後は軍に追われるブルースを助けます。
ベティはハルクの中にブルースの感情が残っていることを理解する数少ない人物です。ハーレム決戦でも彼女の声がハルクを止め、アボミネーションを殺させませんでした。
長らく姿を消していましたが、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』で再登場します。

サディアス・“サンダーボルト”・ロス
アメリカ軍の将軍で、ベティの父。
ブルースへ研究を依頼した人物であり、スーパーソルジャー計画という本当の目的を隠していました。
ハルク誕生後もブルースを救うより、その力を兵器として利用することを優先します。さらにブロンスキーへ強化血清を与えたことで、アボミネーション誕生の原因も作りました。
後に国務長官としてソコヴィア協定を推進し、さらに『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』では大統領として再びガンマ線問題の中心へ戻ります。


エミル・ブロンスキー / アボミネーション
ロスの部隊に参加する特殊部隊員。
優秀な兵士ですが、自分が衰えていくことを受け入れられず、より強い存在であり続けることへ執着しています。
ハルクを見て力への欲望を抱き、スーパーソルジャー血清だけでは満足せず、ブルースの血液まで自ら求めたことでアボミネーションへ変異します。
ブルースが望まず力を得たのに対し、ブロンスキーは自分から力を求め続けた人物です。
後に『シャン・チー/テン・リングスの伝説』『シー・ハルク:ザ・アトーニー』へ再登場します。

サミュエル・スターンズ
グレイバーン大学の研究者。
ブルースとは「ミスター・ブルー」と「ミスター・グリーン」として連絡を取り、ハルク化を治療する方法を研究していました。
科学者として好奇心が強く、ブルースの血液に医学的な可能性を見いだしたため、サンプルを大量に培養しています。
アボミネーション誕生時にブルースの血液が額の傷へ入り、頭部が変化し始める場面を最後に長く消息不明となります。
この伏線は『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』で回収され、スターンズは リーダー として再登場します。

レナード・サムソン
ブルース失踪後にベティと交際している精神科医。
突然戻ったブルースとベティの関係を見て不安を感じ、結果的にロスへブルースの存在を知らせます。
ただし単純な悪役ではなく、軍から追われる危険人物が現れたという状況からすれば、彼の判断には現実的な理由もあります。
重要アイテム・組織
ガンマ線とブルースの血液
ブルースをハルクへ変えた最大の要因です。
本作では影響がブルース本人だけに限定されず、 血液にも異常な性質が残っている ことが重要です。
飲料へ混入した一滴でも人間へ影響を与え、培養された血液はアボミネーション誕生とスターンズの変異へつながります。
スーパーソルジャー計画
ロスがブルースへ秘密にしていた研究の本当の目的。
第二次世界大戦で成功した強化兵士を再現し、軍事利用しようとしていました。
後の『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』によって、スティーブ・ロジャースをキャプテン・アメリカにした計画とのつながりが明確になります。
つまりハルク誕生の背景には、 キャプテン・アメリカの力を再現しようとした試み がありました。
ブロンスキーに投与された強化血清
ロスが保管していたスーパーソルジャー研究由来の血清です。
投与されたブロンスキーは速度、筋力、反射神経、治癒力が大きく強化されます。
しかしそれでもハルクには及ばず、彼はさらにブルースの血液を求めます。その状態で別のガンマ線由来の力を重ねたことが、アボミネーション誕生につながりました。
スターク・インダストリーズ製音響兵器
カルバー大学でロスの部隊が使用する大型音響兵器。
強烈な音波でハルクを挟み込み、一時的に動きを封じます。
スターク・インダストリーズの技術が使われており、『アイアンマン』で描かれたスターク社とアメリカ軍の関係が本作にもつながっています。
カルバー大学
ブルースとベティが研究していた大学で、ハルク誕生につながる実験が行われた場所です。
ブルースがアメリカへ戻った後、ロス軍との大規模な戦闘もここで起きます。
グレイバーン大学
サミュエル・スターンズが研究を行っているニューヨークの大学。
ブルースの治療実験が行われる一方、大量に培養された血液が保管されており、結果的にアボミネーションと後のリーダー誕生につながります。
MCU的に重要なポイント
1. ハルク誕生の背景にスーパーソルジャー計画がある
本作では過去の計画として語られるだけですが、後にスティーブ・ロジャースの物語が描かれることで意味が大きくなります。
ロスはキャプテン・アメリカ級の強化兵士を再現しようとしており、その失敗からハルクが誕生しました。
2. ブルースがハルクを受け入れ始める
物語開始時のブルースは、ハルクを消すことだけを考えています。
しかし最終決戦では、自分からハルクになる道を選びます。さらにラストでは、変身をある程度自分から引き出そうとしているように描かれます。
この変化が『アベンジャーズ』のブルースへつながります。
3. アボミネーションが後年まで生存する
ハルクは最終決戦でブロンスキーを殺しません。
そのためアボミネーションはMCU世界に残り、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』で再登場します。
さらに『シー・ハルク:ザ・アトーニー』では本作のハーレム事件が彼の過去として扱われ、ブルースとの因縁も直接言及されます。
4. サミュエル・スターンズの長期伏線
アボミネーション誕生時、スターンズの額の傷へブルースの血液が入り、頭部が変化し始めます。
本作だけでは未回収のまま終わりましたが、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』で本人が再登場し、 リーダー として物語の中心に関わります。
5. サディアス・ロスが政府側の重要人物として残る
ロスは本作でハルクを追跡する軍人として登場します。
その後は国務長官としてアベンジャーズへソコヴィア協定への署名を迫り、さらに大統領となります。
6. 『アイアンマン』との世界共有
本編ではスターク・インダストリーズ製兵器が登場し、追加シーンではトニー・スターク本人がロスの前に現れます。
『アイアンマン』のニック・フューリー登場に続き、別作品同士が直接接続されることで、MCUが「同じ世界で複数のヒーロー作品が進んでいる」シリーズであることがより明確になります。
作品のテーマ
『インクレディブル・ハルク』の中心テーマは、
「自分の中にある制御できない力と、どう向き合うか」
です。
ブルースは物語の大部分でハルクを消そうとします。怒らないようにし、心拍数を抑え、逃げ続け、最後には治療薬まで試します。
しかしアボミネーションというさらに危険な存在が現れた時、ブルースは自分の中のハルクを必要とします。
一方のブロンスキーは、同じような力を自分から求め、破壊へ使います。つまり力そのものが善悪を決めるのではなく、 その力を持つ人間が何を選ぶか が重要です。
またロスやスターンズを通して、「科学的に可能だから実行していいのか」という問題も描かれます。
本作はハルクを消す物語ではなく、ブルースが ハルクも含めて自分自身であると認め始める物語 です。
まとめ
『インクレディブル・ハルク』は、逃亡者として生きるブルース・バナーが、ハルクという自分の中の怪物を治療しようとするところから始まります。
しかし、ロスのスーパーソルジャー計画、ブロンスキーの力への執着、スターンズによる血液研究が重なり、ブルース以上に危険なアボミネーションが誕生します。そこでブルースは初めて、ハルクから逃げるのではなく、人を守るために自分からハルクになることを選びます。
この決断が、本作におけるブルース最大の成長です。
また、アボミネーション、サディアス・ロス、サミュエル・スターンズなど、本作で提示された人物や設定は後のMCUで長期間にわたって再登場します。現在までの作品を踏まえると、本作は決して孤立した一作ではなく、 ガンマ線系キャラクターとMCUの政府・軍事サイドの原点を作った重要作品 だと分かります。

