アベンジャーズ/エンドゲーム
Avengers: Endgame / 2019年
『アベンジャーズ/エンドゲーム』はMCU公開順第22作、フェーズ3終盤に位置する超大作であり、 サノスによる「指パッチン」で宇宙の半分の生命を失ったヒーローたちが、敗北と喪失を抱えたまま5年間を生き、そのすべてを取り戻すために過去のMCUそのものへ戻って最後の戦いへ挑む物語 です。
MCU時系列では『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』直後の 2018年 から始まり、序盤のサノス討伐後に5年が経過して、物語の大部分は 2023年 に進みます。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、サノスが6つのインフィニティ・ストーンを集め、目的を達成して勝利するまでを描きました。本作はその直後から始まります。しかし物語は単純に「生き残ったアベンジャーズがサノスへ再戦する」方向には進みません。彼らがようやくサノスを発見した時には、すでにインフィニティ・ストーンそのものが破壊されており、失われた人々を戻す方法もなくなっていました。
そして5年後。世界もヒーローたちも、喪失を受け入れられないまま別々の形で生きています。そこへ量子世界から帰還したスコット・ラングが持ち込む「時間」という可能性によって、最後の作戦 「タイム泥棒」 が始まります。
本作では、
- トニー・スターク/アイアンマン
- スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ
- ソー
- ブルース・バナー/ハルク
- ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ
- クリント・バートン/ホークアイ
- ネビュラ
- ロケット
- スコット・ラング/アントマン
- キャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベル
- サノス
- 6つのインフィニティ・ストーン
- 量子世界とタイムトラベル
- 過去作品への再訪
- スティーブとムジョルニア
- ナターシャの自己犠牲
- トニー・スタークの最期
- サム・ウィルソンへの盾の継承
など、2008年の『アイアンマン』から積み重ねられてきた要素が一つの結末へ集約されます。
特に重要なのは、本作が「失ったものを全部元通りにして、何もなかったことにする物語」ではないことです。5年間に生まれた人生は残し、指パッチンで消えた人々だけを現在へ戻す。過去を変えるのではなく、 過去の喪失を抱えたまま現在を救う という選択が物語の中心にあります。
そして最終的に、インフィニティ・サーガを最初から支えてきたトニー・スタークとスティーブ・ロジャースは、それぞれまったく異なる形で戦いを終えます。トニーは自分の命を未来へ渡し、スティーブは長い任務の末に自分自身の人生を選ぶ。本作は宇宙を救う戦争であると同時に、 初期アベンジャーズ一人ひとりに「戦いの終わり」を与える物語 です。
物語開始前に振り返るインフィニティ・ストーンの流れ
『エンドゲーム』を理解するうえでは、6つのインフィニティ・ストーンがどこから来て、誰の手を通り、最終的にどうサノスへ集まったのかを改めて整理しておくことが重要です。
『インフィニティ・ウォー』では「映画開始時点でどこにあるのか」が重要でしたが、本作ではさらに一歩進みます。サノスはすでに6つすべてを集めて指パッチンを終えているため、アベンジャーズが必要とするのは 現在のストーンではなく、過去の特定の時点に存在していたストーン です。
そのため本作のタイム泥棒は、これまでのMCUで実際にストーンが存在していた時代へ戻る計画になります。
| ストーン | 主な姿・容器 | サノスへ渡るまで | タイム泥棒で狙う時代 |
|---|---|---|---|
| スペース・ストーン | テッセラクト | ヒドラ→ハワード/S.H.I.E.L.D.→ロキ→アスガルド→ロキ→サノス | 2012年ニューヨーク。失敗後は1970年キャンプ・リーハイ |
| マインド・ストーン | ロキのセプター→ヴィジョンの額 | サノス側→ロキ→S.H.I.E.L.D./ヒドラ→ウルトロン→ヴィジョン→サノス | 2012年ニューヨークのロキのセプター |
| リアリティ・ストーン | エーテル | 封印→ジェーン→マレキス→アスガルド→コレクター→サノス | 2013年アスガルド、ジェーンの体内 |
| パワー・ストーン | オーブ | モラグ→クイル→ロナン→ノバ軍→サノス | 2014年モラグ、クイルが回収する直前 |
| タイム・ストーン | アガモットの目 | カマー・タージ/エンシェント・ワン→ストレンジ→サノス | 2012年ニューヨーク、エンシェント・ワンが所持 |
| ソウル・ストーン | 容器なし | ヴォーミアで保管→ガモーラを犠牲にしたサノス | 2014年ヴォーミア |
そして『インフィニティ・ウォー』の最後、サノスは6つのストーンをすべてインフィニティ・ガントレットへそろえ、指を鳴らします。宇宙の生命の半分が無作為に消滅する デシメーション が発生し、アベンジャーズとガーディアンズからも多数が消えました。
『エンドゲーム』は、この「6つすべてがサノスの手にある」状態から始まります。
スペース・ストーン――テッセラクトが何度も歴史を動かしてきた
青色の スペース・ストーン は、長く立方体 テッセラクト の内部に収められていました。
第二次世界大戦中、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』でレッド・スカルがノルウェーから奪い、ヒドラ兵器のエネルギー源として利用します。レッド・スカルがテッセラクトへ直接触れたことでヴォーミアへ飛ばされた後、テッセラクトは海へ落下し、ハワード・スタークが回収しました。
その後S.H.I.E.L.D.やプロジェクトP.E.G.A.S.U.S.の研究対象となり、1990年代にはマー・ベルがライトスピード・エンジンの研究へ利用。そのエネルギー事故はキャロル・ダンヴァースが力を得る原因にもなります。
2012年の『アベンジャーズ』ではロキがテッセラクトを奪い、ニューヨーク上空へチタウリ軍を呼び込むポータルを開きます。戦いの後はソーによってアスガルドへ運ばれますが、『マイティ・ソー バトルロイヤル』でロキが密かに持ち出し、『インフィニティ・ウォー』冒頭でサノスへ奪われました。
『エンドゲーム』のタイム泥棒では、まず 2012年ニューヨーク決戦直後 のテッセラクトを狙います。しかし想定外の事故によってロキがテッセラクトを持って逃走。そこでトニーとスティーブは、さらに過去の 1970年キャンプ・リーハイ へ向かいます。
つまりスペース・ストーンは、本作で唯一「最初の回収計画が失敗したため、もう一段階過去へ戻って取りに行くストーン」です。
マインド・ストーン――ロキの武器からヴィジョンの命へ
黄色の マインド・ストーン は、『アベンジャーズ』でロキが使用した セプター の内部にありました。
当時はストーンであることが明確に語られていませんでしたが、ロキはセプターを使ってクリント・バートンやエリック・セルヴィグらの精神を支配します。ニューヨーク決戦後、セプターはS.H.I.E.L.D.へ回収されますが、内部へ潜伏していたヒドラの手に渡り、ヴォルフガング・フォン・ストラッカーの人体実験へ利用されます。
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』では、トニーとブルースがセプター内部の知性を解析したことがウルトロン誕生のきっかけとなり、その後ストーンは人工肉体へ組み込まれて ヴィジョン を誕生させます。
『インフィニティ・ウォー』ではワンダがヴィジョンごとストーンを破壊しますが、サノスがタイム・ストーンで時間を逆転させ、ヴィジョンの額から直接マインド・ストーンを奪いました。
タイム泥棒では、ストーンがまだセプターに入っていた 2012年ニューヨーク決戦直後 を狙います。スティーブがS.T.R.I.K.E.隊員からセプターを奪う場面は、『ウィンター・ソルジャー』で明らかになるヒドラ潜伏を逆手に取った、本作ならではの過去作品再利用になっています。
リアリティ・ストーン――エーテルとしてジェーンの体内にあった石
赤色の リアリティ・ストーン は、かつて液体状の エーテル として存在していました。
『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』でジェーン・フォスターが偶然エーテルを体内へ取り込み、ダーク・エルフの王マレキスがそれを利用して九つの世界を闇へ戻そうとします。マレキス撃破後、アスガルド側はテッセラクトと同じ場所へ二つのストーンを置く危険を避けるため、エーテルをノーウェアのコレクターへ預けました。
『インフィニティ・ウォー』ではサノスがすでにコレクターからリアリティ・ストーンを奪っており、ガーディアンズが到着した時にはノーウェア全体を幻の現実で覆っています。
タイム泥棒では、コレクターへ渡る前の 2013年アスガルド を狙います。ちょうど『ダーク・ワールド』本編の最中で、ジェーンの体内にエーテルがある時期です。
ロケットは特殊な装置でジェーンからエーテルを吸い出し、リアリティ・ストーンを確保します。一方ソーは同じ日に亡くなることになる母フリッガと再会し、ストーン回収以上に大きな精神的救いを得ることになります。
パワー・ストーン――ガーディアンズ結成のきっかけとなったオーブ
紫色の パワー・ストーン は、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で球体 オーブ の中に収められていました。
2014年、ピーター・クイルが惑星モラグの遺跡からオーブを盗み出し、やがて中身が惑星すら破壊できるインフィニティ・ストーンだと判明します。ロナンがストーンを利用してザンダーを滅ぼそうとしますが、ガーディアンズが阻止し、最終的にノバ軍へ預けました。
『インフィニティ・ウォー』開始前、サノスはザンダーを襲撃してパワー・ストーンを強奪しています。映画冒頭の時点ですでにガントレットへ装着されていたため、サノスが最初に確保したストーンです。
タイム泥棒では、 2014年のモラグ へ向かい、クイルがオーブを盗むより前に回収しようとします。
しかしここで2023年のネビュラと2014年のネビュラの神経ネットワークが同期してしまい、過去のサノスが未来の情報を知ることになります。6つの回収任務の中で、最終決戦へ直接つながる最大の事故が発生する場所です。
タイム・ストーン――ストレンジ以前の守護者エンシェント・ワン
緑色の タイム・ストーン は、魔術師たちが守る アガモットの目 の内部にありました。
『ドクター・ストレンジ』ではスティーヴン・ストレンジが時間を操る力を利用し、ドルマムゥを無限の時間ループへ閉じ込めることで地球を救います。その後ストレンジ自身がストーンの守護者となりました。
『インフィニティ・ウォー』ではタイタンでサノスと戦い、1400万605通りの未来を確認したストレンジが、トニーの命と引き換えに自らストーンをサノスへ渡します。これは敗北に見えますが、後に「その未来だけが最終的な勝利へつながる」ことが分かります。
タイム泥棒の行き先は 2012年ニューヨーク です。しかし当時ストレンジはまだ外科医であり、魔術師になっていません。
そこでブルースが訪ねるのは、当時ニューヨーク・サンクタムを守っていた エンシェント・ワン です。彼女との会話によって、本作のタイムトラベルにおける「ストーンを過去から持ち出す危険」と「最後に同じ時点へ返さなければならない理由」が説明されます。
ソウル・ストーン――必ず「愛する者の犠牲」を要求する石
オレンジ色の ソウル・ストーン は、『インフィニティ・ウォー』で初めて所在が明らかになりました。
惑星 ヴォーミア に存在し、番人となっていたレッド・スカルは「ストーンを得るには、愛するものを失わなければならない」と説明します。
サノスはガモーラを崖から突き落とし、その犠牲によってソウル・ストーンを獲得しました。
タイム泥棒では 2014年のヴォーミア へナターシャとクリントが向かいます。二人はストーンの入手条件を知らずに到着し、そこで初めて、石を持ち帰るにはどちらか一人が死ななければならないと知ります。
サノスとガモーラの場面では、犠牲を払う側が相手の命を奪いました。対して本作では、ナターシャとクリントが互いに「相手を生かすため自分が死ぬ」ことを選ぼうとします。
同じソウル・ストーンの条件を使いながら、 サノスの歪んだ愛と、アベンジャーズの自己犠牲を正反対に描く 場面になります。
指パッチン後――6つのストーンはすべてサノスの手にある
『インフィニティ・ウォー』の最後、サノスは6つすべてのインフィニティ・ストーンをそろえました。
ソーがストームブレイカーを胸へ突き刺しますが、致命傷にはならず、サノスは指を鳴らします。宇宙の生命の半分が消滅し、その目的を達成したサノスはスペース・ストーンの力でワカンダから姿を消しました。
『エンドゲーム』冒頭でアベンジャーズが考える最初の作戦は非常に単純です。
サノスを見つけ、ストーンを奪い、もう一度指を鳴らして全員を戻す。
しかし、その作戦が成立する可能性はすでに失われています。
サノスは指パッチンから間もなく、6つのストーンを使って ストーン自身を破壊 していました。
ここでアベンジャーズは、「サノスを倒せば終わる」という通常のヒーロー映画の構造そのものを失います。サノスを殺しても、失われた人々は戻りません。
この絶望が5年間続き、やがてタイム泥棒という最後の方法へつながります。
詳しいあらすじ
1. クリント・バートンの日常が一瞬で消える
物語は、『インフィニティ・ウォー』の指パッチンとほぼ同時刻から始まります。
クリント・バートン/ホークアイは家族とともに自宅で穏やかな時間を過ごしていました。娘ライラへ弓を教え、妻ローラや息子たちはピクニックの準備をしています。
しかしクリントがほんの一瞬目を離した間に、ライラの姿が消えます。声をかけても返事はなく、振り返るとローラと息子たちまで誰もいません。
クリントはまだ何が起きたのか理解できません。観客はワカンダやタイタンで多くのヒーローが灰になった直後なので、彼の家族もサノスの指パッチンで消滅したと分かります。
『シビル・ウォー』で一度引退していたクリントが戦いへ戻った理由の一つは家族でした。本作では、その 戦う理由そのものが一瞬で奪われる ところから彼の物語が始まります。
2. 宇宙を漂流するトニーとネビュラ
タイタンでサノスに敗れた後、 トニー・スターク と ネビュラ はガーディアンズの宇宙船 ベネター で地球を目指していました。
しかし船は損傷し、燃料も食料も尽きかけています。酸素も残りわずかです。
二人はゲームをしたり、ネビュラがトニーへ食料を譲ったりしながら静かに時間を過ごします。幼い頃からサノスのもとで競争と拷問を受け続けたネビュラが、トニーとの単純なゲームで勝ち、彼から素直に称賛される場面は小さいながら重要です。
トニーはペッパーへ残すメッセージをアイアンマンのヘルメットへ録音します。救助の見込みはほとんどなく、自分は宇宙で死ぬと考えていました。
ニューヨーク決戦以来、宇宙から来る脅威へ備え続けたトニーは、ついにその脅威と戦い、敗れ、今度は地球へ帰ることすらできなくなっています。
3. キャプテン・マーベルがベネターを救出する
トニーが眠りについた後、宇宙船の窓の外が強い光に包まれます。
現れたのは キャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベル でした。
『インフィニティ・ウォー』のポストクレジットで、消滅する直前のニック・フューリーが特殊なポケベルから彼女へ救難信号を送っていました。キャロルは地球へ戻り、生き残ったアベンジャーズと接触した後、宇宙へトニーとネビュラを探しに出ていたのです。
キャロルはベネターをそのまま運び、地球のアベンジャーズ・コンパウンドへ帰還します。
これまで地球を離れて他の惑星を守っていたキャプテン・マーベルが、ここで初めてアベンジャーズ本隊の危機へ加わります。ただし本作の中心は彼女が一人で問題を解決することではなく、すでに敗北したヒーローたちがどう立ち直るかにあります。
4. ペッパーとの再会、そしてスティーブへの怒り
地球へ戻ったトニーは、 ペッパー・ポッツ と抱き合います。
同じ場所にはスティーブ、ナターシャ、ブルース、ローディ、ロケットら生存者もいました。
しかしトニーは衰弱しきっているだけでなく、スティーブへ強い怒りを抱いています。
『シビル・ウォー』でスティーブは、いつか危機が起きれば助けるという趣旨の手紙と連絡用の携帯電話を残していました。ところがサノスが地球へ来た時、アベンジャーズは分裂したままで、トニーとスティーブは一度も合流できませんでした。
トニーはかつて「宇宙から敵が来る」と警戒し、地球を守る備えを作ろうとしていました。その恐怖が現実となり、しかも彼が最も恐れていた通り仲間がそろわないまま敗北しました。
彼はスティーブへ「自分は言ったはずだ」と怒りをぶつけ、胸のアーク・リアクターを外して倒れます。
二人の再会は和解ではなく、 『シビル・ウォー』から続く傷が、宇宙規模の敗北によってさらに深くなった状態 から始まります。
5. サノスの居場所を特定するネビュラ
生き残ったメンバーは、失われた人々を戻す方法を探します。
ネビュラは、サノスが目的を達成した後に向かう場所を知っていました。彼は以前から、すべてが終われば「庭」に行くと話していたのです。
さらにロケットたちは、指パッチンからしばらくして再び宇宙規模の巨大なエネルギー放出が起きたことを確認します。
キャロルは「サノスを見つけて、ストーンを奪えばいい」と考えます。ローディも単純だが有効な作戦だと見る一方、ブルースたちは前回がそれほど簡単ではなかったことを知っています。
それでも他に方法はありません。
トニーは療養のため残り、スティーブ、ナターシャ、ブルース、ソー、ローディ、ロケット、ネビュラ、キャロルらはサノスのいる惑星へ向かいます。
前作では全員が別々の戦場に分かれていましたが、ここでは生存者たちが初めて同じ目的へ集まります。
6. 「庭」で暮らすサノス
サノスは、戦争も軍隊もない惑星で一人静かに暮らしていました。
鎧を脱ぎ、畑で作物を収穫し、料理をしている姿は、『インフィニティ・ウォー』で宇宙全体を震え上がらせた征服者とは大きく違います。
彼にとって指パッチンは、支配への第一歩ではありませんでした。本人は本気で「宇宙を救う仕事を終えた」と考えており、その後に王になる必要も、さらに領土を広げる必要もありません。
だからこそサノスは厄介です。
彼は目的のためならすべてを犠牲にしますが、目的を達成した後の欲望がありません。自分が正しいと確信しているため、反省も後悔もしていないのです。
アベンジャーズはそのサノスを奇襲します。
7. サノスの左腕を切り落とす
キャロルがサノスを拘束し、ブルースとローディが身体を押さえ、ソーがストームブレイカーで インフィニティ・ガントレットを装着していた左腕を切断 します。
『インフィニティ・ウォー』ではソーが胸を狙ったため、サノスに指を鳴らす時間を与えてしまいました。
今回はその失敗を繰り返しません。まずガントレットを使えない状態にする、極めて合理的な攻撃です。
しかし切り落とされた腕のガントレットを見ると、そこにストーンはありません。
アベンジャーズが求めていた「奪って使い直す」という方法は、この時点ですでに成立しないことが分かります。
8. サノスはインフィニティ・ストーンを破壊していた
サノスは、6つのストーンを ストーン自身の力で破壊した と明かします。
宇宙規模のエネルギー反応は、もう一度指パッチンを行った痕跡でした。ただし二度目の目的は生命を消すことではなく、誰にも自分の行為を元へ戻されないようにすることです。
ストーンを破壊するほどのエネルギーはサノス自身にも大きなダメージを与え、身体の片側は焼けただれています。
ネビュラは父の性格をよく知っているため、「父は多くのことをするが、嘘はつかない」と認めます。
つまり、サノスを倒しても何も戻りません。
アベンジャーズは敵へたどり着きながら、勝利条件そのものを失います。
9. ソーがサノスの首を落とす
真実を知ったソーは、ストームブレイカーを振り下ろして サノスの首を切断 します。
ロケットが「何をした」と問うと、ソーは「頭を狙った」と答えます。
『インフィニティ・ウォー』でサノスから言われた「頭を狙うべきだった」という言葉への返答です。
しかし今度は頭を狙っても遅すぎます。
サノスは死にましたが、指パッチンは取り消されず、消えた人々も戻りません。
通常なら最大の敵を倒すことが映画のクライマックスになります。しかし本作では、開始からわずかな段階でサノスが死亡します。それでも何一つ解決しません。
ここで物語は、「敵を倒す」ことから「喪失した世界でどう生きるか」へ完全に切り替わります。
10. 5年後――世界は終わっていない
サノスの死から 5年 が経過します。
世界そのものが滅びたわけではありません。都市は残り、生き残った人々は生活を続けています。しかし人口の半分が突然消えた傷は社会全体に残っています。
ニューヨークの風景には、以前の活気とは違う静けさがあります。放置された場所もあり、人々は失われた家族や友人を抱えながら生きています。
『インフィニティ・ウォー』の敗北が一時的な危機ではなく、 5年間続いた現実 として定着したことが重要です。
本作が後に失われた人々を戻しても、この5年間そのものは消えません。生き残った側には5年分の経験があり、消えた側は一瞬後に戻ってきます。
ここで生まれた時間差が、後のMCUで「ブリップ」と呼ばれる社会的な大事件になります。
11. スティーブ・ロジャースの支援グループ
スティーブは、生き残った人々のための支援グループへ参加しています。
参加者たちは、消えた恋人や家族を抱えながら、どうやって新しい人生へ進むかを話します。スティーブは「前へ進まなければならない」と励まします。
しかしそれは、自分自身にも言い聞かせている言葉です。
スティーブは第二次世界大戦から70年後へ目覚めた時にも、知っている世界と大切な人々を一度失っています。そこから新しい仲間を作り、ようやく現代に居場所を持ち始めたところで、今度はその仲間の半分を失いました。
人々へ「前へ進め」と言う一方、彼自身も完全には進めていません。
過去を手放せないスティーブという問題は、本作の最後で彼が選ぶ人生にもつながります。
12. ナターシャがアベンジャーズをつなぎ続ける
ナターシャ・ロマノフはアベンジャーズ・コンパウンドに残り、世界各地の状況をまとめています。
ローディ、ロケット、ネビュラ、オコエ、キャロルらとホログラム通信を行い、各地域や宇宙で起きる問題へ対応しています。
正式なアベンジャーズが崩壊しても、ナターシャはそのネットワークを維持し続けていました。
『アベンジャーズ』以前のナターシャは、自分には「帳簿に赤字がある」と考え、過去の罪を償うために戦っていました。しかしアベンジャーズで仲間を得たことで、彼女にとってチームは単なる任務組織ではなく 家族 になります。
その家族の半分を失った今、ナターシャは残った人々をつなぐことを自分の役割にしています。
スティーブが訪ねても、彼女は簡単には離れられません。
13. クリントは「ローニン」になっていた
ローディはナターシャへ、日本で犯罪組織を次々と殺している人物について報告します。
その正体はクリントでした。
家族を失った後、彼は黒い装備と刀を使う ローニン となり、世界各地の犯罪者を殺しています。
クリントの中には大きな不公平感があります。
自分の妻や子どもたちは何の罪もないのに消えた。一方で麻薬組織や殺人者の中には生き残った者がいる。
サノスの指パッチンは善悪を判断せず完全に無作為でしたが、クリントはその無作為を受け入れられません。そこで自分が裁定者となり、「死ぬべきだった」と考える者たちを殺しています。
彼の行動は正義ではなく、 喪失を怒りへ変えて生き延びる方法 です。
ナターシャはそのことを理解しているからこそ、友人を見捨てられません。
14. 量子世界からスコット・ラングが帰還する
サンフランシスコの倉庫では、保管されていた量子トンネル装置の周囲を一匹のネズミが動き回っています。
偶然スイッチが入り、量子トンネルが作動します。
そこから戻ってきたのが スコット・ラング/アントマン です。
『アントマン&ワスプ』のポストクレジットで、スコットは量子世界へ入っている間にハンク、ホープ、ジャネットが指パッチンで消滅し、戻れなくなっていました。
外の世界では5年が経過していますが、スコット本人の体感では 約5時間 しか経っていません。
ここで初めて、量子世界では通常の時間の流れがそのまま適用されないことが、物語を変える具体的な可能性として示されます。
偶然ネズミがスイッチを踏んだことが、宇宙全体を救う計画の最初のきっかけになります。
15. 消えた人々の名前と成長したキャシー
外へ出たスコットは、世界がまったく変わっていることに気づきます。
街には指パッチンで消えた人々の名前を刻んだ慰霊碑があり、スコットは必死に自分と家族の名前を探します。
自分の名前が「消えた人々」の中にあるのを見つけた後、娘 キャシー の家へ向かいます。
扉を開けたのは、スコットが知っている幼い少女ではなく成長したキャシーでした。
スコットにとっては数時間しか経っていないのに、娘には5年の人生があります。
二人は抱き合いますが、この再会そのものが、量子世界での時間差が現実に起きていたことを証明します。
そしてスコットは、自分の体験が「失った人々を取り戻す方法」につながる可能性を考え始めます。
16. スコットがアベンジャーズへ「時間泥棒」を提案する
スコットはアベンジャーズ・コンパウンドを訪れ、スティーブとナターシャへ量子世界での体験を説明します。
外では5年、内部では約5時間。
この時間のズレを利用すれば、量子世界を通って過去の特定の時点へ移動できるのではないか。
そして過去からインフィニティ・ストーンを集め、現在で指パッチンをやり直せば、消えた人々を戻せるのではないか。
スコット自身も理論を完全に理解しているわけではありません。彼が知っているのは、量子世界では時間が通常とは違うという実体験だけです。
それでも5年間何の方法も見つからなかったスティーブとナターシャにとって、初めて現れた可能性でした。
三人は、この理論を実現できる人物としてトニー・スタークを訪ねます。
17. 5年後のトニー――ペッパーとモーガン
トニーは都会から離れた湖畔の家で暮らしていました。
ペッパーと結婚し、二人の間には娘 モーガン・スターク が生まれています。
『インフィニティ・ウォー』冒頭でトニーは、ペッパーとの間に子どもがいる夢を見たと話していました。敗北後の5年間で、その「普通の未来」が現実になっていたのです。
スティーブたちがタイムトラベルの可能性を説明しても、トニーはすぐには協力しません。
理由は臆病だからではありません。
今のトニーには、サノスに奪われなかった人生があります。モーガンを愛し、ペッパーと家庭を作り、ようやく自分が守りたかった未来を手に入れています。
過去を変えることでこの5年間まで消えてしまう可能性があるなら、彼には受け入れられません。
18. 「今を失わず、消えた人々だけを戻す」
スティーブは、失われた人々を救えるかもしれないと説得します。
しかしトニーは、自分たちが求めているのは過去そのものを書き換えることではないと確認します。
5年間を消し去れば、モーガンの存在も失われるかもしれません。
この問題は、本作の救済方法に大きな制約を与えます。
最終的に彼らが行うのは「5年前に戻ってサノスを止める」ことではありません。過去からストーンを一時的に借り、 2023年の現在で消えた生命を戻す ことです。
このため、指パッチン後に生き残った人々が5年間で作った人生は維持されます。
本作が時間旅行映画でありながら、過去の失敗を消す物語にならない最大の理由です。
19. ブルース・バナーとハルクが一つになる
トニーに断られたスティーブたちは、次に ブルース・バナー へ協力を求めます。
しかし5年前とは外見が大きく変わっています。
ブルースはハルクの巨大な身体を持ちながら、人格と知性はブルースのままです。
『インフィニティ・ウォー』ではハルクがサノスに敗れて以降、戦闘へ出ることを拒み、ブルースとの関係は完全に崩れていました。その後ブルースは二人を別人格として争わせるのではなく、自分自身の両面として受け入れる道を選びます。
ガンマ線研究によってブルースの頭脳とハルクの身体を統合し、現在の姿になりました。
『インクレディブル・ハルク』以来、ブルースはずっとハルクを消すか制御しようとしてきました。本作ではついに、 ハルクを排除せず自分の一部として統合する ところまで到達しています。
20. 最初のタイムトラベル実験は大失敗
ブルースは量子世界の専門家ではありませんが、スコットを使ってタイムトラベル実験を始めます。
しかし結果はひどいものでした。
量子トンネルへ入ったスコットが、老人、少年、赤ん坊など異なる年齢の姿で次々と戻ってきます。
ブルースは「スコットを時間の中へ送る」のではなく、 時間をスコットの身体へ通してしまった と説明します。
コミカルな場面ですが、重要なのは、量子世界を使えば時間へ干渉できること自体は証明された点です。
問題は、狙った時代へ安全に移動し、元の年齢のまま帰還するための航法です。
それを完成させる人物が、やはりトニーになります。
21. トニーがタイムトラベルの航法を解く
その夜、トニーは自宅で量子世界の時間移動をシミュレーションします。
一度は家族のために断ったものの、ピーター・パーカーの写真を見たことで考えを止められません。
タイタンでピーターが消える直前、トニーは彼を抱えながら何もできませんでした。5年間幸せに暮らしても、その罪悪感は消えていません。
トニーは時間移動の構造を逆メビウスの輪として計算し、ついに安全な航法を完成させます。
モーガンが起きてきて、トニーへ「3000回愛してる」と伝えます。
この家庭を失いたくない。それでもピーターたちを救える可能性を無視できない。
トニーはその二つを両立させる方法があると判断し、作戦へ戻ることを決めます。
22. トニーとスティーブの和解――盾が戻る
トニーはアベンジャーズ・コンパウンドへ向かい、タイムトラベル用の装置をスティーブへ見せます。
そして作戦への条件として、 現在の5年間を変えないこと を確認します。
さらにトニーは、長くスティーブから離れていた キャプテン・アメリカの盾 を返します。
『シビル・ウォー』の最後、トニーは父ハワードが作った盾をスティーブへ持つ資格がないと怒り、スティーブはその場へ盾を置いて去りました。
本作でトニーが盾を返すことは、単なる装備の返却ではありません。
二人はソコヴィア協定について完全に同じ意見になったわけではなく、過去の傷も消えていません。それでも今は互いを必要とし、再び同じ側で戦うことを選びます。
アベンジャーズの中心だった二人が、ようやく同じチームへ戻る瞬間です。
23. クリントを使ったタイムトラベルの実証
トニーの装置とブルースの研究を組み合わせ、量子世界を通る安全な時間移動が可能になります。
本格作戦の前に、クリントがテスト要員となります。
彼は自宅の過去へ戻り、指パッチン前の家族の声を聞きます。家の中ではローラや子どもたちがまだ普通に暮らしています。
クリントは家族へ駆け寄ろうとしますが、その直前に現在へ引き戻されます。
手には過去の家から持ち帰った 野球グローブ が残っています。
これでタイムトラベルが理論ではなく、物体を伴って実際に成立することが証明されます。
同時にクリントにとっては、5年間求め続けた家族が本当に過去に存在していると確認した瞬間です。
彼には、この作戦を成功させる個人的な理由が誰よりも強くあります。
24. ナターシャが東京でクリントを連れ戻す
作戦準備と並行して、ナターシャは東京にいるクリントを訪ねます。
クリントはヤクザ組織を壊滅させ、その場でも敵を容赦なく殺していました。
ナターシャは彼を止め、「希望がある」と伝えます。
クリントは簡単には信じません。5年間、あり得ない希望を持つことをやめて生きてきたからです。
それでもナターシャの言葉を聞き、彼は涙をこらえきれません。
ローニンとしてのクリントを断罪するのではなく、ナターシャは友人をアベンジャーズへ連れ戻します。
『アベンジャーズ』でロキに洗脳されたクリントを救ったのもナターシャでした。本作でも、最も深く落ちた彼を救い出すのは同じ人物です。
この二人の関係が、後のヴォーミアで最大の形を取ります。
25. 「過去を変えても現在は変わらない」
タイム泥棒の準備中、メンバーはタイムトラベル映画の知識を使って「過去を変えれば現在も変わる」と考えます。
しかしブルースは、それはこの世界の時間移動の仕組みではないと説明します。
彼らが過去へ行った瞬間、そこは自分たちにとっての現在になります。そこで何かを変えても、自分たちが出発した2023年の過去そのものが書き換わるわけではありません。
つまり「赤ん坊のサノスを倒せば指パッチンが消える」といった方法は成立しません。
過去からストーンを持ち出せば、その過去から枝分かれした現実にはストーンが存在しない問題が生まれます。だからこそ、使用後に 同じ瞬間へ返却する必要 があります。
本作のタイムトラベルは、失敗をなかったことにする装置ではありません。
過去を訪れながら、最終的に救うべき場所はあくまで現在です。
26. タイム泥棒――6つのストーンを過去から借りる計画
メンバーはこれまでの戦いを振り返り、6つのインフィニティ・ストーンがいつ、どこに存在していたかを整理します。
そこで重要な事実に気づきます。
2012年のニューヨークには、スペース、マインド、タイムの3つが同時に存在していました。
ニューヨーク決戦直後、テッセラクトとロキのセプターはアベンジャーズの手にあり、タイム・ストーンはニューヨーク・サンクタムのエンシェント・ワンが守っています。
さらに2013年のアスガルドにはリアリティ・ストーン、2014年のモラグにはパワー・ストーン、同年のヴォーミアにはソウル・ストーンがあります。
限られたピム粒子を使い、メンバーは複数の時代へ同時に分かれることになります。
トニー、スティーブ、ブルース、スコットは2012年ニューヨーク。
ソーとロケットは2013年アスガルド。
ローディとネビュラは2014年モラグ。
ナターシャとクリントは2014年ヴォーミア。
MCUの歴史そのものを作戦地図として利用する、インフィニティ・サーガならではの最終作戦です。
27. 2012年ニューヨーク――最初のアベンジャーズ決戦へ戻る
トニー、スティーブ、ブルース、スコットは量子世界を通り、2012年のニューヨーク決戦へ到着します。
眼下では、かつての自分たちがチタウリと戦っています。
現在の4人にとっては歴史上の出来事ですが、当時のアベンジャーズにとってはまさに世界を救う戦闘の最中です。
本作は単に過去作品の名場面を再現するだけではありません。
2012年には知られていなかった事実を、2023年の彼らは知っています。S.H.I.E.L.D.内部にはヒドラが潜伏している。ロキのセプターにはマインド・ストーンがある。ニューヨーク・サンクタムにはエンシェント・ワンがいる。
後の作品で得た知識を使って、過去作品の裏側を進むことがタイム泥棒の面白さであり、同時に危険でもあります。
28. ブルースとエンシェント・ワン――タイム・ストーンを巡る交渉
ブルースはニューヨーク・サンクタムへ向かいます。
そこでは エンシェント・ワン が屋上からチタウリ兵を魔術で撃退していました。
ブルースはドクター・ストレンジを探しますが、2012年のストレンジはまだ魔術師ではなく、エンシェント・ワンは「彼は数ブロック先で手術をしている」と答えます。
ブルースがタイム・ストーンを求めると、彼女は即座に拒否。アストラル体だけをブルースの身体から押し出し、ストーンを持ち出す危険を説明します。
インフィニティ・ストーンは単なる武器ではなく、それぞれの現実の時間の流れを支える重要な存在です。
一つを過去から取り除けば、その時点から分岐した現実は、本来ストーンが防いでいた脅威に対抗できなくなる可能性があります。
ここで本作は「過去から何でも盗めばいい」わけではないことを明確にします。
29. 「ストレンジが自分から渡した」ことでエンシェント・ワンの考えが変わる
ブルースは、使用後にすべてのストーンを 奪った瞬間へ返す と説明します。
そうすれば分岐した時間軸にストーンがない期間は実質的に生まれません。
それでもエンシェント・ワンは簡単には納得しません。
しかしブルースが、未来のドクター・ストレンジがタイム・ストーンをサノスへ 自分から渡した と話すと、彼女は驚きます。
エンシェント・ワンはストレンジが将来自分の後継者になることを知っており、彼が無意味にストーンを渡す人物ではないと理解しています。
つまりストレンジが渡したなら、その先に理由がある。
『インフィニティ・ウォー』でストレンジが見た「1400万605通りのうち一つだけの勝利」が、本人不在の2012年でも作戦を前へ進めます。
エンシェント・ワンはブルースを信じ、タイム・ストーンを渡します。
30. ニューヨーク決戦直後――ロキとテッセラクト
一方トニー、スティーブ、スコットは、スターク・タワーでロキが敗北した直後の場面へ潜入します。
2012年のトニー、ソー、スティーブ、ブルース、ナターシャ、クリントらがそろい、ロキを拘束しています。
ここにはテッセラクトとロキのセプターが同時にあります。
しかしS.H.I.E.L.D.側から アレクサンダー・ピアース 、ジャスパー・シットウェル、ブロック・ラムロウらが現れ、テッセラクトとセプターの引き渡しを要求します。
当時のアベンジャーズは彼らを味方だと思っています。
2023年のスティーブたちは、『ウィンター・ソルジャー』を経験しているため、その中にヒドラ構成員がいることを知っています。
この情報差が、マインド・ストーン回収の突破口になります。
31. スティーブが「ヒドラ万歳」でセプターを奪う
S.T.R.I.K.E.隊員たちはロキのセプターをエレベーターで運びます。
そこへ2023年のスティーブが乗り込みます。
『ウィンター・ソルジャー』では、このエレベーター内でスティーブがS.T.R.I.K.E.隊員たちに包囲され、大乱闘になりました。しかし今回は戦いません。
スティーブはシットウェルへ近づき、ピアース長官からセプターを運ぶよう指示されたと嘘をつきます。
疑われると、さらに小声で 「ヒドラ万歳」 と告げます。
未来でヒドラの正体を知っているスティーブだからできる方法です。
隊員たちは彼を仲間だと思い、セプターを渡します。
かつての名場面を正反対の方法で突破する、タイム泥棒を象徴する場面です。
32. トニーとスコットによるテッセラクト強奪作戦
テッセラクトはピアースが回収しようとしています。
そこでトニーとスコットは、当時のトニーからケースを奪う作戦を実行します。
極小化したスコットが2012年のトニーの胸部アーク・リアクターへ侵入し、一時的に機能を妨害します。
突然苦しみ始めたトニーを周囲が介抱し、その混乱でケースが床へ落ちます。
2023年のトニーがS.H.I.E.L.D.警備員に化けてテッセラクトを拾い、持ち去ろうとします。
計画はほぼ成功していました。
しかしそこへ、2012年の ハルク が階段を下りてきます。
エレベーターへ乗せてもらえず怒っていたハルクは、扉を破壊しながら通路へ出てきて、運悪く2023年のトニーを吹き飛ばします。
ケースからテッセラクトが転がり出ます。
33. ロキがテッセラクトを持って逃走する
床へ転がったテッセラクトは、拘束されていた ロキ の足元へ届きます。
ロキは迷いません。
テッセラクトをつかみ、その力で空間を移動して姿を消します。
2012年の歴史では、ロキはこの後ソーによってアスガルドへ連行されるはずでした。しかし2023年のアベンジャーズが介入したことで、新しい分岐が生まれます。
この出来事は後のドラマ『ロキ』へ直接つながる重要な分岐ですが、本作のメンバーにとってはもっと単純な問題です。
スペース・ストーンの回収に失敗した。
しかもピム粒子は往復分しか用意されておらず、簡単に別の時代へやり直す余裕はありません。
トニーとスティーブはその場で、もう一つの可能性を考えます。
34. 2012年のスティーブ対2023年のスティーブ
マインド・ストーンを持って移動する2023年のスティーブは、2012年の自分自身と遭遇します。
2012年のスティーブは、目の前の男をロキが変身した姿だと考えて攻撃します。
同じスーパーソルジャー同士、同じ戦闘スタイル、同じ盾を使う者同士の戦いになります。
2023年のスティーブは過去の自分を傷つけたくありませんが、任務のためには止めなければなりません。
最後には、未来の知識を使って「バッキーが生きている」と告げ、2012年のスティーブを動揺させます。その隙にセプターで気絶させます。
倒れた過去の自分を見て、2023年のスティーブはかつて自分が言っていた決め台詞に対して呆れます。
長いMCUの中で変化した 現在のスティーブが、純粋で一直線だった過去の自分を見る場面 でもあります。
35. 1970年へ――トニーとスティーブの最後の賭け
2012年でテッセラクトを失ったトニーは、スティーブへ提案します。
さらに過去へ行けば、テッセラクトと追加のピム粒子を同時に確保できる時代がある。
行き先は 1970年、ニュージャージー州キャンプ・リーハイ です。
ここはスティーブが第二次世界大戦中にスーパーソルジャー候補として訓練を受けた場所であり、戦後はS.H.I.E.L.D.の施設として利用されています。
当時テッセラクトはS.H.I.E.L.D.が保管し、ハンク・ピムも組織で研究を行っていました。
問題は、2012年から1970年へ飛べば、二人の手元に残るピム粒子はほとんどありません。失敗すれば2023年へ帰れなくなります。
スティーブはトニーを信じ、二人は1970年へ向かいます。
かつて最も激しく対立した二人が、ここでは互いの判断へ命を預けています。
36. キャンプ・リーハイ――MCUの歴史が重なる場所
1970年のキャンプ・リーハイには、S.H.I.E.L.D.の地下施設が存在していました。
スティーブにとっては、自分がキャプテン・アメリカになる前の原点です。
一方トニーにとっては、父ハワードが働いていた時代です。
二人は職員へ変装し、別々に行動します。
トニーはテッセラクトの保管場所へ、スティーブはハンク・ピムの研究室へ向かいます。
ここでは『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』『エージェント・カーター』『アントマン』『アイアンマン』につながる複数の歴史が同じ施設へ集まっています。
タイム泥棒は単にストーンを回収する作戦ですが、ヒーローたち自身にとっては、 自分の人生で失った人物ともう一度同じ時代を生きる機会 にもなっていきます。
37. トニーとハワード・スタークの最後の会話
トニーはテッセラクトを回収した後、偶然 ハワード・スターク と出会います。
1970年のハワードは、未来から来た男が自分の息子だとは知りません。
トニーは「ハワード・ポッツ」と偽名を名乗り、彼とエレベーターへ乗ります。
ハワードは妻マリアが妊娠中で、もうすぐ子どもが生まれることを話します。つまり、この時点のトニーはまだ生まれていません。
『アイアンマン2』以来、トニーは父が自分をどう思っていたのかに複雑な感情を抱いてきました。『シビル・ウォー』では、両親と最後に会話した日の後悔まで描かれています。
ここでトニーは、父が自分の誕生を楽しみにしながら、同時に「自分が父親としてうまくやれるか」を不安に思っていたことを知ります。
38. 「子どものためなら何でもする」――父になったトニーが父を理解する
トニーはハワードへ、父親になることについて助言するような会話をします。
ハワードは、自分の父親は厳しかったが、子どものためなら何でもすると語ります。
以前のトニーは、ハワードを仕事ばかりで自分に冷たい父親として見ていました。しかし自分自身がモーガンの父となった今、ハワードの不器用さを以前とは違う角度から理解できます。
別れ際、トニーは思わず父を抱きしめます。
ハワードには理由が分かりません。
トニーにとっては、1991年に突然両親を失って以来、一度もできなかった最後の別れです。
本作の時間旅行は過去を変えません。しかし、過去へ戻った人物の心は変えることができる。
この場面はその代表例です。
39. スティーブが見るペギー・カーター
一方スティーブは、ハンク・ピムの研究室から追加の ピム粒子 を盗み出します。
その途中、ガラス越しに一人の女性を見つけます。
ペギー・カーターです。
第二次世界大戦の最後、スティーブはペギーとダンスの約束をしながら、テッセラクトを積んだ爆撃機とともに北極海へ墜落しました。約70年後に目覚めた時、約束は永遠に果たせないものになっていました。
2016年には高齢のペギーの死を見届けています。
しかし1970年では、彼女がまだS.H.I.E.L.D.で働いています。
スティーブは姿を見せず、ただガラス越しに見つめます。
現在へ帰る任務を優先しますが、 「もしあの時代に戻れたら」という可能性 が初めて現実のものとして目の前に現れます。
この経験が、物語の最後の選択につながります。
40. 2013年アスガルド――『ダーク・ワールド』の日へ
一方、ソーとロケットは2013年のアスガルドへ到着します。
時期は『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』本編の最中。ジェーン・フォスターがエーテルを体内に宿し、アスガルドへ連れて来られている日です。
ロケットの任務は、ジェーンの身体からリアリティ・ストーンを吸い出すこと。
しかしソーは、王宮を歩くうちにその日が何の日なのかを思い出します。
この日、母 フリッガ がダーク・エルフの襲撃によって死亡します。
未来のソーは、父オーディン、母フリッガ、弟ロキ、親友ヘイムダル、ウォリアーズ・スリー、アスガルド、そして指パッチンで多くの民を失っています。
サノスを止められなかった罪悪感も重なり、彼は母の姿を見た瞬間に任務から逃げたくなります。
41. フリッガは未来のソーを見抜く
ソーは王宮内でフリッガと出会います。
姿は以前より太り、酒に依存し、精神的にも崩れている未来の息子です。
フリッガはすぐに、目の前のソーが自分の時代の息子ではないと気づきます。
彼女は魔術を学び、人を見る目にも優れていました。
ソーは未来から来たこと、母がこの日に死ぬことを直接伝えないようにしながら、これまで失ったものや自分の失敗を話します。
「自分は失敗した」「自分はふさわしくない」と考えるソーに対し、フリッガは、誰もが「なるべき人」になるのではなく、 自分が何者なのかを受け入れる必要がある という考えを伝えます。
ソーが最も必要としていたのは、ストーンではなく母からのこの言葉でした。
42. ムジョルニアが未来のソーを選ぶ
ロケットはジェーンからエーテルを吸い出し、リアリティ・ストーンの確保に成功します。
帰還直前、ソーは手を伸ばし、2013年のアスガルドに存在していた ムジョルニア を呼びます。
ハンマーは迷わず彼の手へ飛んできます。
ソーは心から喜びます。
『バトルロイヤル』でムジョルニアはヘラに破壊され、現在には存在しません。しかしそれ以上に重要なのは、落ちぶれ、自信を失い、身体も精神も変わった現在のソーでも、ムジョルニアが彼を 「ふさわしい者」 として認めたことです。
ソーが自分自身を信じられなくても、彼の本質は失われていませんでした。
この確認によって、ソーは再び戦うための足場を取り戻します。
ムジョルニアもそのまま2023年へ持ち帰られます。
43. 2014年モラグ――スター・ロードより先にオーブを奪う
ローディとネビュラは2014年の惑星モラグへ到着します。
時期は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』冒頭。まもなくピーター・クイルが遺跡へ入り、オーブを盗む時間です。
クイルはヘッドホンで音楽を聴きながら踊り、本人は格好よく遺跡を進んでいるつもりです。
しかし外から見ているローディたちには、ただ一人で踊っている奇妙な男にしか見えません。
ローディはクイルを殴って気絶させ、ネビュラとともにオーブを回収します。
パワー・ストーンの任務自体は非常に簡単に成功します。
しかし同じ2014年には、まだサノス、ガモーラ、過去のネビュラが活動しています。
現在のネビュラがこの時代へ来たことが、タイム泥棒最大の危機を引き起こします。
44. 2023年のネビュラと2014年のネビュラが同期する
ネビュラの身体は機械化されており、サノスのネットワークと接続された記憶システムを持っています。
2014年には、過去のネビュラがサノスのもとで活動していました。
同じ存在が同じ時間帯に二人存在したことで、二人の神経ネットワークが干渉を起こします。
2014年のネビュラの頭の中へ、2023年のネビュラが持つ未来の映像が流れ込みます。
そこにはサノスの首が切断される場面、ガモーラが彼を裏切る未来、アベンジャーズがインフィニティ・ストーンを集め直そうとしている計画まで記録されています。
過去のサノスはその映像を見ます。
彼はまだストーンを一つも集め切っていない段階で、 未来では自分が勝利し、その後アベンジャーズに殺されること を知ります。
ここで敵が、2018年のサノスではなく2014年のサノスへ切り替わります。
45. 2014年のサノスが未来の自分の勝利を知る
サノスはネビュラの記憶から、未来の自分が6つのインフィニティ・ストーンを集め、宇宙の半分を消すことに成功したと知ります。
しかし同時に、その行為を生き残った者たちが受け入れず、過去へ戻ってすべてを覆そうとしていることも知ります。
『インフィニティ・ウォー』のサノスは、目的達成後に武器を捨て、静かに暮らそうとしました。
対して2014年のサノスは、まだ戦争を続ける征服者です。
そして未来の抵抗を見て、自分の考えをさらに過激化させます。
半分を残せば、生き残った者が失った半分を覚え続ける。
ならば今度は宇宙を一度完全に消滅させ、ストーンの力で 感謝する生命だけが存在する新しい宇宙を作り直す 。
この発想によって、2014年のサノスは『インフィニティ・ウォー』の自分以上に危険な敵になります。
46. 2023年のネビュラが捕らえられる
ローディはパワー・ストーンを持って2023年へ帰還します。
しかしネビュラは同期エラーによって量子移動を実行できず、モラグに残されます。
彼女は未来へ警告を送ろうとしますが、サノスの軍に捕らえられます。
過去のネビュラは未来の自分を強く憎みます。
2023年のネビュラはガモーラと和解し、サノスの支配から抜け出し、アベンジャーズの仲間として生きています。
一方2014年の彼女は、まだ父に認められることへ執着し、ガモーラへの劣等感と憎悪の中にいます。
同じ人物の「支配されていた過去」と「そこから抜け出した未来」が直接向き合う構図です。
サノスは2023年のネビュラからピム粒子と時間移動装置を奪い、未来へ侵入する準備を始めます。
47. 2014年のガモーラが未来のネビュラを見る
2014年の ガモーラ も、2023年のネビュラの存在を知ります。
未来のネビュラは、自分とガモーラがやがてサノスへ反抗し、本当の姉妹のような関係になると話します。
この時点のガモーラはまだサノスの暗殺者として活動していますが、すでに父を嫌悪し、オーブを奪って逃げる計画を持っています。
そのため、未来のネビュラが示す可能性を完全には拒絶しません。
一方2014年のネビュラは、父への忠誠を選び続けます。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』以降、ネビュラが長い時間をかけて変化したことが、過去の自分との比較によって明確になります。
彼女はもともと善人だったわけではありません。
誰と出会い、何を選び直したかによって変われた人物なのです。
48. ヴォーミアへ向かうナターシャとクリント
ナターシャとクリントはベネターで2014年のヴォーミアへ向かいます。
二人とも、そこにソウル・ストーンがあることしか知りません。
到着すると、番人 レッド・スカル が現れます。
ナターシャに対して父の名前を呼び、クリントに対しても家族を知っているように語ります。
『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』でテッセラクトに触れて消えたレッド・スカルは、ソウル・ストーンを求める者を導く存在となっていました。
彼は二人を崖の上へ案内し、ストーンの条件を説明します。
「魂には魂を」。
ソウル・ストーンを得るには、愛する者を失わなければなりません。
二人はここで初めて、帰れるのは一人だけだと理解します。
49. ナターシャとクリントが「自分が死ぬ」と争う
レッド・スカルの説明を聞いた二人は、ほぼ同時に結論を出します。
自分が犠牲になる。
クリントは家族を失った後、ローニンとして多くの人間を殺しました。自分には戻る資格がないと考えています。
ナターシャはそれを認めません。
彼女にとってアベンジャーズは家族であり、5年間ずっと失った家族を取り戻す方法を探し続けてきました。ここまで来て、全員を戻せるなら自分の命を使うことを迷いません。
二人は敵と戦うのではなく、相手を生かすために互いを止めようと戦います。
『インフィニティ・ウォー』でサノスがガモーラを犠牲にした時とは、愛の形が正反対です。
サノスは相手の意思を無視して命を奪いました。
ナターシャとクリントは、互いに相手だけは死なせたくないと考えています。
50. ナターシャ・ロマノフの最期
激しい争いの末、クリントが崖から落ちかけます。
ナターシャは彼を助けながら、自分自身は崖の下へぶら下がります。
クリントは彼女の腕をつかみ、絶対に離さないようにします。
しかしナターシャは、クリントに家族を取り戻してほしいと考えています。
そして彼の手を振りほどき、自ら落下します。
ナターシャ・ロマノフは死亡し、その犠牲によってクリントのもとへソウル・ストーンが現れます。
かつて自分を「暗殺者」「赤字の帳簿を持つ人間」と考えていたナターシャは、最後には宇宙の半分の生命を救うため、自分の命を自ら差し出します。
彼女が求め続けた贖罪は、誰かに認められる形ではなく、 自分が家族と信じた人々を未来へ戻す選択 として完成します。
51. 6つのストーンはそろったが、ナターシャは戻らない
各チームが2023年へ帰還します。
スティーブとトニーはスペース・ストーン、スティーブはマインド・ストーン、ブルースはタイム・ストーン、ロケットとソーはリアリティ・ストーン、ローディはパワー・ストーン、クリントはソウル・ストーンを持ち帰ります。
計画通り6つすべてがそろいました。
しかしクリントの隣にナターシャはいません。
仲間たちは湖のそばに集まり、彼女の死を受け止めようとします。
ソーは「ストーンを使えばナターシャも戻せる」と考えますが、クリントはヴォーミアで感じたことから、それはできないと理解しています。
ソウル・ストーンの交換は取り消せません。
世界を救うために必要なストーンを手に入れた瞬間、アベンジャーズはまた一人、最も古い仲間を失いました。
勝利への道そのものが犠牲を要求することが、ここで改めて示されます。
52. 新しいインフィニティ・ガントレットを作る
トニー、ブルース、ロケットたちは、回収した6つのストーンを使用するための新しいガントレットを作ります。
ナノテクノロジーを利用した装置で、アイアンマンの技術を基礎にしています。
問題は、誰が指を鳴らすかです。
6つのインフィニティ・ストーンを同時に使えば、使用者へ凄まじいエネルギーが流れ込みます。サノスですら二度目の使用で身体の半分を焼かれました。
ソーは自分がやると主張します。
これまでの失敗を取り返したい気持ちが強く、何か大きな役割を果たすことで自分を証明しようとしています。
しかしブルースは、ストーンから放たれるエネルギーの多くが ガンマ線 であることに気づきます。
ガンマ線によってハルクとなった自分なら、最も耐えられる可能性が高い。
ブルースがガントレットを使うことになります。
53. ブルースの指パッチン――消えた生命を現在へ戻す
ブルースはガントレットを装着します。
6つのストーンのエネルギーが身体へ流れ込み、右腕が激しく焼かれていきます。
仲間たちが見守る中、ブルースは指を鳴らします。
彼が求めたのは「5年前へ戻す」ことではありません。
サノスの指パッチンで消えた生命を、現在の2023年へ戻すことです。
同時にブルースはナターシャも戻そうとしますが、それだけはできません。
指パッチン直後、外から鳥の声が聞こえ、自然が戻ったような変化が現れます。
そしてクリントの携帯電話に、5年前に消えた妻ローラから着信が入ります。
作戦は成功しました。
宇宙の半分の生命が帰還します。
しかし仲間たちが喜ぶ時間はほとんどありません。
54. 2014年のネビュラが現在へ潜入していた
2023年へ戻ってきた「ネビュラ」は、実は2014年のネビュラでした。
サノスは捕らえた未来のネビュラから量子移動装置を奪い、過去のネビュラを彼女になりすませて送り込んでいたのです。
2014年のネビュラはアベンジャーズの装置を操作し、量子トンネルを2014年へ接続します。
そしてサノスの巨大母艦 サンクチュアリII を、軍勢ごと2023年へ呼び込みます。
アベンジャーズはタイム泥棒で「過去からストーンを借りる」ことには成功しました。
しかし同時に、 過去のサノスまで現在へ連れてきてしまった のです。
現在のサノスは5年前にソーが殺しています。
ここから戦うのは、指パッチンをまだ実行していない2014年のサノスです。
55. アベンジャーズ・コンパウンド壊滅
サンクチュアリIIは出現直後、アベンジャーズ・コンパウンドへ猛烈な砲撃を行います。
建物は一瞬で崩壊し、地下まで大量の瓦礫が落下します。
指パッチン成功を確認する間もなく、メンバーは分断されます。
ローディ、ロケット、ブルースは地下で瓦礫に閉じ込められ、浸水が始まります。
クリントはガントレットとともに地下へ落下し、サノス軍のアウトライダーズに追われます。
スコットは一度離れた場所から仲間を救出するため動きます。
地上ではトニー、スティーブ、ソーがサノスと向き合います。
2012年のニューヨーク決戦以来、アベンジャーズの象徴的な拠点となってきた場所が破壊され、最後の戦いはホームであるコンパウンドの瓦礫の上から始まります。
56. クリントがインフィニティ・ガントレットを守る
崩壊した地下で、クリントはナノ・ガントレットを発見します。
6つのストーンはすべて中に入ったままです。
直後、サノス軍のアウトライダーズが大量に押し寄せます。
クリントは弓、爆発矢、刀を使って狭い地下通路を逃げながら、ガントレットだけは絶対に渡さないようにします。
家族を取り戻すためにここまで来たクリントにとって、ストーンを奪われればナターシャの犠牲まで無意味になります。
最初の指パッチンでは家族を守れず、ヴォーミアではナターシャを守れませんでした。
今度はその二人が残した未来を守るため、世界で最も危険な物を抱えて一人で走ります。
このガントレットは、ここから最終決戦の中心となります。
57. 現在のネビュラと2014年のガモーラが脱出する
サンクチュアリIIでは、捕らえられていた2023年のネビュラが2014年のガモーラに救われます。
未来のネビュラから、自分がいずれサノスを裏切り、ピーター・クイルやガーディアンズと家族になることを聞いたガモーラは、父に従い続ける道を選びません。
二人は地上へ降り、ガントレットを持つクリントと合流しようとします。
しかし2014年のネビュラも現れます。
彼女にとって未来の自分は、父を裏切り、弱くなった存在に見えています。
未来のネビュラは「父に認められなくても生きられる」と伝えようとしますが、過去の自分は銃を向けます。
そこで2023年のネビュラは、ガモーラを守るため2014年の自分自身を撃ち殺します。
過去の自分を殺しても現在のネビュラが消えないことで、本作の「過去を変えても現在は上書きされない」という時間旅行のルールも改めて示されます。
58. アイアンマン、ソー、キャプテン・アメリカ対サノス
地上では、トニー、ソー、スティーブの三人がサノスと向き合います。
2012年の『アベンジャーズ』から中心に立ってきた三人が、最後の敵へそろって挑む構図です。
ソーはストームブレイカーに加え、過去から持ち帰ったムジョルニアも使用します。
三人は連携して攻撃しますが、2014年のサノスはインフィニティ・ストーンを一つも持っていないにもかかわらず圧倒的です。
双刃の剣だけでアイアンマンの攻撃を防ぎ、ソーを押し倒し、ストームブレイカーを胸へ押し込もうとします。
『インフィニティ・ウォー』ではストーンの力がサノスの圧倒性を強めていました。
しかし本作は、 ストーンなしでもサノス本人が極めて強い戦士である ことを改めて示します。
59. スティーブ・ロジャースがムジョルニアを持ち上げる
ソーがサノスに殺されかけた瞬間、地面に落ちていたムジョルニアが動きます。
ハンマーはサノスへ飛び、ソーを救います。
そして戻っていった先に立っていたのは、 スティーブ・ロジャース でした。
『エイジ・オブ・ウルトロン』の祝勝会で、スティーブがムジョルニアをわずかに動かし、ソーが驚いた場面がここで回収されます。
スティーブは完全にムジョルニアを持ち上げ、その力を使います。
盾とハンマーを組み合わせ、雷を呼び、ソーのようにムジョルニアを投げながらサノスへ連続攻撃を叩き込みます。
「ふさわしい者だけが持てる」というオーディンの魔法により、スティーブはソーの力を得ています。
彼がスーパーソルジャーになる前から持っていた自己犠牲と誠実さが、 神の武器からも認められた瞬間 です。
60. サノスがキャプテン・アメリカの盾を砕く
ムジョルニアを使ったスティーブもサノスを追い詰めますが、最後には反撃を受けます。
サノスは双刃の剣でヴィブラニウム製の盾へ何度も斬撃を加え、ついに 盾の大部分を破壊 します。
『エイジ・オブ・ウルトロン』でワンダがトニーへ見せた悪夢には、砕けたキャプテン・アメリカの盾が映っていました。
それが現実に近い形で起こります。
スティーブ自身も傷だらけになり、仲間たちは倒れ、目の前にはサノス軍の巨大な軍勢が並びます。
それでも彼は立ち上がります。
壊れた盾のベルトを腕へ締め直し、一人で軍勢へ向かおうとします。
勝てる可能性がなくても立つ。
これはスーパーソルジャーになる前、路地裏で何度殴られても立ち上がったスティーブと同じ本質です。
61. 「左を見ろ」――サムの声が戻ってくる
サノス軍を前に一人で立つスティーブの通信へ、聞き覚えのある声が入ります。
サム・ウィルソンです。
「左を見ろ」という言葉は、『ウィンター・ソルジャー』冒頭でスティーブがランニング中のサムを何度も追い抜いた時のやり取りを思わせます。
スティーブが振り返ると、背後にオレンジ色のポータルが開きます。
そこから最初に現れるのは、サム、ティ・チャラ、シュリ、オコエ。
続いてワカンダ軍、ドクター・ストレンジ、ウォン、スパイダーマン、ガーディアンズ、ワンダ、バッキー、ワスプ、ヴァルキリー、魔術師たち、ラヴェジャーズ、アスガルドの戦士たちなど、指パッチンから戻ったヒーローと援軍が次々に現れます。
ブルースの指パッチンは本当に成功していました。
62. 22作品のヒーローが同じ戦場へ集まる
『インフィニティ・ウォー』では、ヒーローたちはタイタン、ワカンダ、宇宙へ分断されたまま戦いました。
トニーとスティーブは一度も会わず、ガーディアンズの全員と地球側の全員が一つの場所へ集まることもありませんでした。
しかし本作の最終決戦では、これまで別々の作品、国家、惑星、世界で戦ってきた人物たちが、初めて同じ戦場へ集結します。
ワカンダの軍勢、アスガルドの生存者、魔術師たち、ラヴェジャーズ、ガーディアンズ、アベンジャーズ。
地球だけでなく銀河規模で積み上げられてきた勢力が、サノス軍へ対抗する一つの連合になります。
スティーブはムジョルニアを構え、ついに号令をかけます。
「アベンジャーズ、アッセンブル」。
フェーズ1から使われてきたチーム名が、ここで最大の意味を持ちます。
63. 最終決戦――全員がサノス軍へ突撃する
スティーブの号令で、両軍が一斉に激突します。
巨大化したスコットはリヴァイアサンを殴り倒し、ローディは強化されたウォーマシン・アーマーで空中から攻撃します。
ティ・チャラとオコエはワカンダの戦士たちを率い、ヴァルキリーはペガサスに乗って飛行。ウォンや魔術師たちはポータルと魔術で戦場を支えます。
ソーはストームブレイカー、スティーブはムジョルニア、トニーはナノテク・アーマーでサノス軍へ挑みます。
これは単に人数の多い戦闘ではありません。
過去10年以上のMCUで、それぞれ別の事情からヒーローになった人物たちが、 同じ未来を守るという一点だけで並んで戦う場面 です。
サノスの「宇宙の運命を一人で決める」という思想に対し、無数の人々が自分の意思で協力する構図にもなっています。
64. ピーター・パーカーとトニーが再会する
戦場でトニーは、戻ってきた ピーター・パーカー と再会します。
ピーターにとっては、タイタンで消えてから数分程度しか経っていません。
ストレンジのポータルで戻り、何が起きたのか興奮しながらトニーへ説明します。
しかしトニーには5年が経っています。
タイタンで自分の腕の中から灰になった少年を、ずっと救えなかった相手として記憶してきました。
トニーは言葉より先にピーターを抱きしめます。
『スパイダーマン:ホームカミング』では、ピーターがトニーへ抱きつこうとして「ドアを開けただけだ」とかわされた場面がありました。
今回はトニーから抱きしめます。
タイム泥棒へ参加するきっかけの一つだった存在を、本当に取り戻せた瞬間です。
65. 2014年のガモーラとピーター・クイル
ピーター・クイルは、戦場で ガモーラ を見つけます。
彼にとってガモーラはサノスに殺された恋人です。
しかし目の前にいるのは2014年から来たガモーラで、クイルと出会う前の彼女です。
クイルは喜んで近づきますが、ガモーラには彼への記憶がありません。突然触れようとする知らない男として扱い、容赦なく攻撃します。
未来のネビュラから、将来自分がクイルと恋人になると聞いても信じ難い様子です。
指パッチンで戻ったのは『インフィニティ・ウォー』で死亡したガモーラではありません。
過去から分岐して現在へ来た別の時点のガモーラです。
この違いが、後のガーディアンズの物語へ大きく残ります。
66. ガントレットを量子トンネルへ戻す作戦
戦闘中、ヒーローたちは6つのストーンをサノスから遠ざける必要があると判断します。
スコットのバンには量子トンネルが残っています。
そこへガントレットを送り込めば、少なくともサノスからストーンを隔離できる可能性があります。
クリントからガントレットを受け取ったティ・チャラが戦場を走り、サノス軍の攻撃をかわします。
途中でピーターへ渡され、彼はウェブで運びながら敵軍から逃げます。
一つのガントレットを守るため、ヒーローたちがリレーのように役割を引き継ぎます。
『インフィニティ・ウォー』では各チームが別々のストーンを守っていました。
本作では6つが一つにそろったため、 宇宙全体の運命が一つの物体へ集中 しています。
67. ワンダがサノスを圧倒する
戦場で ワンダ・マキシモフ がサノスと対峙します。
サノスは彼女を覚えていません。
このサノスは2014年から来たため、ヴィジョンを殺した2018年の出来事を経験していないからです。
しかしワンダにとっては違います。
彼女はヴィジョンを自分の手で一度殺し、その直後サノスに時間を戻され、もう一度ヴィジョンを殺されました。
ワンダは怒りを爆発させ、念動力でサノスの剣を破壊し、装甲を剥がしながら空中へ持ち上げます。
サノスは単独では逃れられず、ついに自軍へ 戦場全体を砲撃するよう命令 します。
味方まで巻き込む攻撃を選ぶほど、ワンダはサノスを追い詰めています。
68. サンクチュアリIIの無差別砲撃
サノスの命令で、サンクチュアリIIは地上へ猛烈な砲撃を開始します。
敵味方を区別しない攻撃によって、アベンジャーズ側だけでなくサノス軍も吹き飛ばされます。
魔術師たちは防壁を張り、ストレンジは崩壊した水路から押し寄せる大量の水を抑えます。
サノスにとって部下は目的のための道具です。
自分が敗北しそうになれば、自軍ごと砲撃することをためらいません。
アベンジャーズ側が互いを守りながら戦うのに対し、サノスは最後まで「自分の目的のために他者を犠牲にする」姿勢を変えません。
しかし突然、サンクチュアリIIの砲撃が地上から別方向へ切り替わります。
宇宙から新たな脅威が接近していました。
69. キャプテン・マーベルがサンクチュアリIIを破壊する
空から現れたのは キャプテン・マーベル です。
キャロルは宇宙船へ単身突入し、サンクチュアリIIを機体中央から貫通。
巨大母艦は爆発し、墜落します。
『キャプテン・マーベル』でクリー艦隊を一人で退却させた規格外の力が、ここでも発揮されます。
彼女はそのまま地上へ降り、ピーターからガントレットを受け取ります。
ピーターは一人で敵軍を抜けることを心配しますが、周囲にはワンダ、ペッパー、ヴァルキリー、オコエ、シュリ、ワスプ、マンティスら女性ヒーローたちが集まり、道を切り開きます。
キャロルはガントレットを持って量子トンネルへ向かいます。
しかしサノスも最後の力でそれを阻止しようとします。
70. サノスが再びガントレットを手にする
量子トンネルを巡る攻防の中で、バンは破壊されます。
ガントレットは戦場へ投げ出され、サノスがついに手にします。
ソーやスティーブたちが止めようとしますが、サノスは振り払い、ナノ・ガントレットを装着します。
6つのストーンのエネルギーが身体へ流れ込みます。
一度指を鳴らされれば、今度こそ宇宙は完全に破壊されかねません。
キャロルがサノスの腕を押さえ、指を開かせないようにします。
サノスが頭突きをしても、キャロルはほとんど動きません。
そこでサノスはガントレットからパワー・ストーンだけを外し、素手で握ってキャロルを殴り飛ばします。
ストーンを単独で直接利用する即興の判断により、サノスは最後の一瞬を作ります。
71. ストレンジがトニーへ示す「一つだけの未来」
戦場の中でトニーはドクター・ストレンジを見るよう促します。
タイタンでストレンジは、1400万605通りの未来のうち勝利できるのは一つだけだと話していました。
トニーは「今がその一つなのか」と確認しようとします。
ストレンジは、もし答えを言えばその未来は起きなくなると返します。
そして最終局面、ストレンジはトニーへ人差し指を一本立てます。
言葉はありません。
しかしトニーは理解します。
この瞬間が、あの「一つ」の勝利につながる選択の時です。
サノスを止める方法は、誰かが6つのストーンを使わなければならない。
そして今、ガントレットへ最も近いのはトニーです。
72. トニーが6つのストーンを奪う
トニーはサノスへ飛びかかり、ナノ・ガントレットをつかみます。
サノスは彼を簡単に振り払います。
そして勝利を確信し、指を鳴らします。
しかし何も起こりません。
ガントレットを見ると、6つのインフィニティ・ストーンが消えています。
トニーのアイアンマン・アーマーとガントレットは同じナノテクノロジーで作られており、接触した一瞬にストーンを自分の右手側へ移していました。
トニーのアーマーには6つすべてのストーンが並んでいます。
生身の人間に近いトニーの身体へ、宇宙そのものを支配するエネルギーが流れ込み始めます。
彼はそれが致命的になることを理解しています。
73. 「私がアイアンマンだ」――トニー・スタークの最後の指パッチン
サノスは、 「私は絶対なのだ」 と勝利を宣言します。
それに対しトニーは、最初の『アイアンマン』のラストと同じ言葉を返します。
「私がアイアンマンだ」。
そして指を鳴らします。
ストーンの力は、2014年から来たサノスとその軍勢を標的にします。
アウトライダーズ、チタウリ、ブラック・オーダー、サンクチュアリIIの残存兵が次々と灰になります。
最後にサノス自身も、敗北を理解しながら静かに座り込み、消滅します。
2008年、トニーは「自分がアイアンマンだ」と公表することでMCU最初のヒーローとなりました。
11年後、同じ言葉とともに自分の命を使い、宇宙全体を救います。
インフィニティ・サーガは、トニー・スタークの自己宣言から始まり、同じ自己宣言による自己犠牲で決着します。
74. トニー・スタークの最期
指パッチンのエネルギーによって、トニーの右半身は致命的な損傷を受けます。
ローディが最初に近づき、長年の親友を見守ります。
続いてピーターが駆け寄り、「勝った」と必死に話しかけます。
しかしトニーはもうほとんど反応できません。
最後にペッパーが近づきます。
彼女はトニーへ、みんなは大丈夫だから もう休んでいい と伝えます。
『アイアンマン3』以降もトニーは、危機が来るかもしれないという恐怖から完全には戦いをやめられませんでした。ウルトロンを作り、アーマーを増やし、ニューヨークの空を見続け、サノスの存在を恐れてきました。
その戦いがようやく終わります。
ペッパーに見守られながら、トニーのアーク・リアクターの光が消えます。
75. 勝利しても、失ったものは戻らない
サノス軍は消滅し、指パッチンで失われた生命も戻りました。
しかしアベンジャーズの勝利は完全な「元通り」ではありません。
ナターシャはソウル・ストーンの犠牲として死亡したままです。
トニーは最後の指パッチンで死亡しました。
ヴィジョン、2018年のガモーラ、ロキ、ヘイムダルなど、指パッチン以外の理由で死亡した人物も戻っていません。
5年間の時間そのものも消えていません。
この点が本作の重要な結末です。
アベンジャーズは過去を消して「失敗しなかった世界」を作ったのではありません。
敗北した歴史も、犠牲も、5年間の喪失も残したまま、その先に未来を取り戻した。
だからこそ、勝利には重さがあります。
76. トニーの葬儀――MCUをつないできた人物たち
トニーの葬儀は、彼がペッパーとモーガンと暮らしていた湖畔の家で行われます。
ペッパーとモーガン、ハッピー、ローディ、スティーブ、ソー、ブルース、クリントをはじめ、サム、バッキー、ワンダ、ピーターとメイ、ドクター・ストレンジ、ガーディアンズ、ティ・チャラとシュリ、キャロル、ニック・フューリーら、これまで別々の作品でトニーと直接・間接に関わってきた人々が集まります。
さらに『アイアンマン3』で少年だった ハーレー・キーナー の姿もあります。
湖には、最初の『アイアンマン』でペッパーがトニーへ贈った小型アーク・リアクターが浮かべられます。
ケースには、トニーが洞窟から生還した後に彼女が残した 「トニー・スタークにも心がある証拠」 という意味の言葉が刻まれています。
MCU第1作の象徴が、第22作の葬儀で戻ってきます。
77. 「3000回愛してる」――トニーが家族へ残した映像
葬儀の前、家族と仲間たちはトニーがタイム泥棒前に録画していた映像を見ます。
計画が危険であることを理解していたトニーは、もし自分が帰れなかった場合に備えてメッセージを残していました。
彼は自分たちが時間を使った最後の賭けへ挑むこと、家族を愛していることを語ります。
そして最後にモーガンへ、 「3000回愛してる」 と伝えます。
序盤ではモーガンが父へ言った言葉でした。
トニーは世界を救うために家庭を捨てたのではありません。家族を持ったからこそ、現在を消さずに他の家族も取り戻す方法を選びました。
最期まで「世界か家族か」の二択ではなく、 自分の家族が生きられる世界そのものを守る ことを選んだ人物です。
78. ハッピーとモーガン――父が残したもの
葬儀後、ハッピーはモーガンと話します。
何が食べたいかと聞くと、モーガンは チーズバーガー と答えます。
ハッピーは少し笑いながら、父トニーもチーズバーガーが好きだったと話し、好きなだけ買ってあげると約束します。
『アイアンマン』でアフガニスタンから帰還したトニーが最初に求めたものの一つもチーズバーガーでした。
巨大なアーマーやアーク・リアクターではなく、こうした小さな好みが娘へ受け継がれています。
トニーの遺産はスターク・インダストリーズや技術だけではありません。
ペッパー、モーガン、ハッピー、ローディ、ピーターなど、彼と関係を築いた人々の中に残ります。
79. クリントが家族のもとへ帰る
ブルースの指パッチンによって、ローラと子どもたちは戻ってきました。
クリントはようやく自宅へ帰り、家族と再会します。
映画冒頭では、ほんの一瞬目を離した間に全員が消えました。
本作の長い戦いを経て、同じ家へもう一度家族がそろいます。
しかしナターシャは戻りません。
クリントが家族を取り戻せたのは、彼女がヴォーミアで自分を生かしたからです。
そのためこの再会は完全な幸福だけではありません。
クリントは、自分が生きてここへ帰ったことそのものに、ナターシャの選択を背負い続けることになります。
80. ワンダとクリント――ナターシャとヴィジョンを悼む
トニーの葬儀後、クリントはワンダと湖畔で話します。
クリントは、ナターシャに「勝った」と伝えられたらよかったと語ります。
ワンダは、彼女もヴィジョンも 分かっている と答えます。
指パッチンで戻ったワンダも、ヴィジョンを取り戻せてはいません。
二人とも、大切な人を失ったまま勝利を迎えています。
ここでも本作は、宇宙を救えば悲しみが消えるとは描きません。
勝利後も、残された者は喪失とともに生きていく必要があります。
ナターシャとヴィジョンの死は、次の物語へ持ち越される傷として残ります。
81. ソーが王位をヴァルキリーへ託す
ノルウェーの ニュー・アスガルド で、ソーはヴァルキリーへ国民を託します。
これまでソーは、自分がオーディンの後継者として王になるべきなのかという問題を何度も抱えてきました。
『バトルロイヤル』では、アスガルドは土地ではなく民だと理解し、王として民を導きます。
しかし本作ではさらに進み、 自分が王でなければならないわけではない と認めます。
ヴァルキリーこそニュー・アスガルドを導く人物だと判断し、自分は「自分が何者なのか」を探すため宇宙へ出ることを選びます。
母フリッガから受けた「なるべき人ではなく、自分自身であれ」という言葉を実行する決断です。
王位を捨てることは責任から逃げることではなく、適切な人物へ託すことでもあります。
82. ソーがガーディアンズと宇宙へ旅立つ
ソーはベネターへ乗り込み、ガーディアンズと行動を共にします。
クイルは船のリーダーが誰なのかを巡ってソーと張り合いますが、周囲のメンバーは二人のやり取りを面白がっています。
クイルは端末で2014年から来たガモーラの行方も探しています。
ソーにとっては、アスガルドの王という役割を離れ、久しぶりに自分自身の旅へ出ることになります。
『バトルロイヤル』から『インフィニティ・ウォー』まで喪失の連続だったソーが、ここでようやく「守るべき王国」だけに縛られず次の人生へ向かいます。
この状態が後の『ソー:ラブ&サンダー』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』側の物語へつながります。
83. スティーブが6つのストーンを過去へ返す
戦いが終わっても、タイム泥棒には最後の仕事が残っています。
過去から持ち出したインフィニティ・ストーンを、それぞれ奪った時点へ返さなければなりません。
そうしなければ、エンシェント・ワンが説明した通り、ストーンを失った分岐世界が危険にさらされます。
スティーブが任務を引き受け、6つのストーンとムジョルニアを持って量子トンネルへ入ります。
2013年から借りたムジョルニアも、本来その時代のソーが必要とするため返却対象です。
映画では返却場面そのものは描かれませんが、スティーブは2012年ニューヨーク、2013年アスガルド、2014年モラグとヴォーミア、1970年キャンプ・リーハイなどへ移動し、歴史を可能な限り元の状態へ戻したと考えられます。
しかし彼は予定された時間になっても帰ってきません。
84. 老いたスティーブ・ロジャース
ブルース、サム、バッキーが量子トンネルの前で待ちますが、スティーブは予定の位置へ帰還しません。
するとバッキーが少し離れた湖畔のベンチへ目を向けます。
そこには、 年老いたスティーブ・ロジャース が座っています。
スティーブはストーンを返した後、そのまま過去に残ることを選びました。
第二次世界大戦から現代へ目覚めて以来、彼はずっと「他人のために戦う人生」を続けてきました。
アベンジャーズとしての役目を終えた今、初めて自分自身のために生きることを選んだのです。
若い身体で戻って任務を続けるのではなく、一人の人間として年月を過ごし、老いた姿で仲間の前へ現れます。
85. サム・ウィルソンへ盾を渡す
老いたスティーブはサムを呼びます。
そしてケースから、新しい キャプテン・アメリカの盾 を取り出します。
サムへ「試してみろ」と渡し、盾を受け継ぐ意思があるかを確かめます。
サムは、スティーブがいない世界が寂しいと率直に話しながら、盾を受け取ります。
バッキーは少し離れた場所からそのやり取りを見守り、穏やかにうなずきます。
スティーブが選んだ後継者は、最古の親友バッキーではなく、現代で出会い、自分と同じく人を支えることのできるサムでした。
ここでキャプテン・アメリカという役割がスティーブ個人から次世代へ渡されます。
この継承が『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』以降の大きな軸になります。
86. ペギーとのダンス――スティーブが選んだ人生
サムはスティーブの左手に結婚指輪があることへ気づき、誰と人生を過ごしたのか尋ねます。
スティーブは詳しく語らず、自分だけの秘密にすると答えます。
場面は過去へ移ります。
一軒の家の中で、若いスティーブが ペギー・カーター とゆっくり踊っています。
『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』の最後、二人はダンスの約束をしながら果たせませんでした。
約70年の時間を失い、世界を何度も救い、アベンジャーズとして最後の任務を終えた後、スティーブはついにその約束へ戻ります。
映画の最後は戦場ではなく、二人のキスで終わります。
トニーが未来のために命を使ったのに対し、スティーブは 戦い続けることをやめ、自分が失った人生を生きる という形で物語を終えます。
ポストクレジット
本作には、通常のMCU作品のような映像によるミッドクレジット/ポストクレジットシーンはありません。
これは『エンドゲーム』が次作品への予告よりも、ここまでのインフィニティ・サーガに一度明確な区切りをつける作品であることにも合っています。
ただしエンドクレジットの最後には、映像ではなく 金属をハンマーで叩く音 が聞こえます。
これは『アイアンマン』で、トニーが洞窟の中で最初のアイアンマンスーツ マーク1 を作っていた時の金属音を思わせる演出です。
MCU第1作で始まったトニー・スタークの物語へ、音だけで最後に戻る形になっています。
主要キャラクターまとめ

トニー・スターク / アイアンマン
MCU第1作から物語を牽引してきた天才発明家であり、本作でその人生を完結させます。
『インフィニティ・ウォー』で最も恐れていたサノスに敗れ、ピーターまで失った後、5年間でペッパーとの家庭を築き、娘モーガンを得ます。そのためタイム泥棒への参加は、「失った人々を救いたい」というヒーローとしての責任と、「今ある家族を絶対に失いたくない」という父親としての願いの間での選択になります。
トニーは過去をなかったことにはせず、現在を維持したまま消えた人々を戻す方法を完成させます。1970年では父ハワードと再会し、自分が父になったことで初めて父の不器用さを理解します。
最終決戦ではストレンジが示した唯一の未来を理解し、サノスから6つのストーンを奪って自ら指を鳴らします。
『アイアンマン』の最後と同じ「私がアイアンマンだ」という言葉でサノス軍を消し、自分の命を未来へ渡します。自己中心的な兵器開発者として始まった人物が、 自分自身を究極の犠牲として差し出すヒーローへ到達した結末 です。

スティーブ・ロジャース / キャプテン・アメリカ
指パッチン後も人々を支え続ける一方、自分自身は過去と喪失から完全には前へ進めていない人物です。
『シビル・ウォー』で決裂したトニーとは本作で和解し、返された盾を再び持ちます。タイム泥棒では2012年の自分と戦い、1970年にはペギーの姿を見ます。過去を訪れることで、スティーブ自身が「自分には失った人生がある」と改めて意識することになります。
最終決戦ではムジョルニアを持ち上げ、サノスへ一人で立ち向かいます。身体能力や盾以前から持っていた自己犠牲の精神が、オーディンの魔法にも「ふさわしい」と認められた場面です。
戦いの後はストーンを返却する任務を終え、そのまま過去に残ってペギーと人生を過ごします。そして老いた姿でサムへ盾を託します。
スティーブの結末は「死ぬまで戦う」ことではありません。 誰かを守るために自分の人生を後回しにし続けた男が、最後に自分自身の人生を選ぶ ことで完成します。

ソー
本作開始時点で、最も深く敗北を引きずっているアベンジャーの一人です。
サノスを止められなかった直後、「今度こそ頭を狙う」ことでサノスを殺しますが、失われた生命は戻りません。その無力感から5年間引きこもり、酒とゲームへ逃げ、外見も大きく変わります。
重要なのは、本作がソーの価値を身体つきや戦士らしさだけで判断しないことです。2013年へ戻って母フリッガと再会し、自分は失敗したと告白するソーへ、母は「なるべき姿」ではなく自分自身であることを促します。
そしてムジョルニアが未来のソーの手へ飛んだことで、彼が今も「ふさわしい」ことが証明されます。
最終決戦後は王位をヴァルキリーへ譲り、ガーディアンズと宇宙へ旅立ちます。 王であること、最強であること、完璧な自分であることから離れ、自分が何者なのかを探す段階へ進んだソー です。

ブルース・バナー / ハルク
『インクレディブル・ハルク』以来続いてきた、ブルースとハルクの対立に一つの答えを出します。
『インフィニティ・ウォー』ではハルクが戦闘を拒否し、ブルースとの関係は崩れていました。その後5年間の研究によって、ブルースはハルクを消すのでも押さえ込むのでもなく、 知性と人格を保ったままハルクの身体を持つ存在 へ統合します。
タイム泥棒では科学者として時間移動の理論を支え、2012年のエンシェント・ワンからタイム・ストーンを借りる重要な交渉も担当します。
そして回収した6つのストーンを使う際、ガンマ線への耐性が最も高い自分が指を鳴らします。その代償として右腕へ大きな損傷を負いますが、宇宙の半分の生命を現在へ戻すことに成功します。
「ガンマ線によって人生を壊された男」が、最後には 同じガンマ線由来の力で宇宙を救う という長い物語の反転です。

ナターシャ・ロマノフ / ブラック・ウィドウ
指パッチン後の5年間、事実上アベンジャーズをつなぎ続けていた人物です。
かつてはレッドルームの暗殺者であり、自分の過去を「帳簿の赤字」と考えていました。しかしアベンジャーズへ加わることで初めて、自分にも家族と呼べる人々ができました。
そのため半分の仲間を失った後もコンパウンドを離れず、地球と宇宙の残存メンバーをまとめ続けます。ローニンとなったクリントを東京まで迎えに行くのも、彼を家族として見捨てないからです。
ヴォーミアではソウル・ストーンの条件を知り、クリントと互いに自分が犠牲になろうと争います。最終的にナターシャが自ら手を離し、ストーンを仲間へ残します。
彼女の死はサノスに殺されたものでも、任務の失敗でもありません。 自分が見つけた家族を取り戻すため、自分で選んだ自己犠牲 です。

クリント・バートン / ホークアイ
本作冒頭で妻ローラと子どもたち全員を指パッチンによって失います。
その喪失を受け入れられず、5年間はローニンとして世界中の犯罪組織を殺し続けます。無作為に家族が消えた一方で犯罪者が生き残った現実へ、自分の手で「罰」を与えようとしていました。
ナターシャから希望を知らされてアベンジャーズへ戻り、タイムトラベルの最初の成功例にもなります。ヴォーミアでは自分の命を犠牲にしようとしますが、ナターシャによって生かされます。
最終決戦では6つのストーンが入ったガントレットを守り抜き、最後には家族のもとへ帰還します。
ただし、その幸福はナターシャの死によって成立しています。クリントは家族を取り戻すと同時に、 親友が自分を生かした意味を背負って生きる人物 になります。

ネビュラ
本作で最も時間旅行の影響を直接受ける人物です。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』当時のネビュラは、サノスに認められたいという執着とガモーラへの嫉妬に支配されていました。しかし長い物語を経た2023年の彼女は、サノスから完全に離れ、アベンジャーズの仲間としてタイム泥棒へ参加します。
2014年へ戻ったことで過去の自分とネットワークが同期し、サノスへ未来の情報を漏らしてしまいます。その結果、自分の過去そのものと直接対峙することになります。
未来のネビュラは2014年のガモーラへ「自分たちはやがて姉妹になる」と伝え、父から逃れる道があることを示します。一方、過去の自分がガモーラを殺そうとした時には、自ら引き金を引きます。
サノスの娘として作られた自分を、自分の選択で完全に断ち切る場面です。

スコット・ラング / アントマン
サノスとの戦いには参加していなかったものの、本作の逆転を可能にする最大のきっかけを持ち込む人物です。
量子世界での体感約5時間に対し、外では5年が経過していた経験から、時間移動の可能性を思いつきます。
スコットはトニーやブルースほど理論に詳しくありません。しかし「実際に時間の流れが違った」という経験を持っているため、誰も考えられなかった発想を持ち込みます。
また、5年間で成長したキャシーとの再会によって、ブリップが家族へ与えた時間差を最も分かりやすく示す人物でもあります。
最終決戦では巨大化して瓦礫から仲間を救い、サノス軍へも立ち向かいます。
小規模な強盗映画の主人公として登場したアントマンの「泥棒」という要素が、宇宙を救う タイム泥棒 という作戦へ拡張されるのも本作ならではです。

ロケット
ガーディアンズの中で指パッチンを生き残った数少ないメンバーです。
5年間はナターシャたちと連絡を取り、宇宙の問題へ対応していました。仲間を失った悲しみを大きく表には出しませんが、ガーディアンズという家族をほぼ全員失った状態です。
タイム泥棒では、ソーと2013年のアスガルドへ向かいます。任務に集中できないソーを叱りながらも、彼が深く傷ついていることも理解しています。
ジェーンからエーテルを回収して作戦を成功させ、最終決戦後には戻ってきたガーディアンズと再びそろいます。
荒っぽく他人を信用しなかったロケットが、現在では地球のアベンジャーズとも自然に作戦を組むまでになっており、 銀河側と地球側をつなぐ人物 になっています。

キャロル・ダンヴァース / キャプテン・マーベル
ニック・フューリーの救難信号を受けて地球へ戻り、宇宙を漂流していたトニーとネビュラを救出します。
サノス討伐にも参加し、その後の5年間は地球だけでなく他の惑星の危機へ対応しているため、常にアベンジャーズ・コンパウンドにいるわけではありません。
最終決戦ではサンクチュアリIIを単独で貫いて破壊し、サノスが頭突きをしてもほとんど動かないほどの力を見せます。
サノスは彼女を止めるため、パワー・ストーンをガントレットから直接外して使用しなければなりませんでした。
本作では登場時間こそ限られていますが、 地球のアベンジャーズを越えた宇宙規模の守護者 としての立場が明確になります。

サノス
本作には、実質的に二つの時点のサノスが登場します。
2018年のサノスはすでに指パッチンを終え、ストーンを破壊して隠居しています。アベンジャーズに襲撃されても自分の行為を後悔せず、ソーに首を落とされて死亡します。
一方、最終決戦の敵となるのは2014年のサノスです。
未来のネビュラの記憶から、自分が将来勝利することと、その勝利を生き残った者たちが覆そうとすることを知ります。その結果「半分を残す」という思想からさらに進み、 宇宙を完全に消して自分に感謝する新しい宇宙を作る と宣言します。
これによって、彼の「救済」という言葉の奥にある独善性が完全に露出します。
最終的には、2018年の自分が集めるはずだった6つのストーンをトニーに奪われ、自分と軍勢すべてが消滅します。

ペッパー・ポッツ / レスキュー
トニーと結婚し、5年間で娘モーガンを育てています。
トニーがタイム泥棒へ参加することに迷う最大の理由は、ペッパーとモーガンとの現在を失いたくないからです。
一方ペッパーは、トニーが解決できる可能性を知りながら何もしなければ一生苦しむ人物であることも理解しています。
最終決戦では、トニーが以前彼女のために作っていたアーマーを装着して レスキュー として参戦。アイアンマンと背中合わせで戦います。
トニーの最期には「みんな大丈夫だから休んでいい」と伝えます。
彼を戦いへ駆り立てるのではなく、最後に戦いを終わらせる許可を与えられるのが、長く彼を最も近くで見てきたペッパーです。

モーガン・スターク
トニーとペッパーの娘で、指パッチン後の5年間に生まれました。
彼女の存在があるため、トニーは「5年前へ戻って指パッチン自体をなかったことにする」という方法を受け入れません。
つまりモーガンは、本作の時間旅行ルールを感情面から決定づける存在でもあります。
父へ「3000回愛してる」と伝えた言葉は、トニーが残した最後の映像でも返されます。
トニーが救おうとしたのは抽象的な宇宙だけではなく、 モーガンがこれから生きていく具体的な未来 でした。

ジェームズ・“ローディ”・ローズ / ウォーマシン
指パッチン後もナターシャと連携し、世界各地の状況へ対応しています。
タイム泥棒ではネビュラと2014年モラグへ向かい、ピーター・クイルより先にパワー・ストーンを回収します。
最終決戦では崩壊したコンパウンド地下に閉じ込められますが、スコットに救出され、強化型ウォーマシン・アーマーで戦闘へ復帰します。
トニーの最期には最初にそばへ近づき、言葉を交わさず親友を見守ります。
『アイアンマン』から長くトニーの暴走を止め、同時に最も信頼できる戦友であり続けた人物です。

サム・ウィルソン / ファルコン
『インフィニティ・ウォー』で消滅していましたが、ブルースの指パッチンで復活します。
最終決戦では「左を見ろ」という言葉とともにスティーブへ最初に呼びかけ、無数の援軍が到着するきっかけを作ります。
戦いの後、老いたスティーブから新しい盾を託されます。
これは単なる装備の譲渡ではなく、 キャプテン・アメリカという象徴を次世代へ渡す行為 です。
サム自身はスーパーソルジャーではありませんが、兵士の心を支える活動を行い、スティーブが現代で最初に自然な友情を築いた人物でもあります。

バッキー・バーンズ
指パッチンから復活し、ワカンダ側の援軍とともに最終決戦へ参加します。
本作での出番は多くありませんが、ラストのスティーブとサムの場面で重要な役割を持ちます。
スティーブがストーン返却から戻らない時、バッキーは誰より早く老いた彼の存在に気づきます。そしてサムへ先に行くよう促します。
長年スティーブと人生を共有してきたバッキーは、彼がどんな選択をしたのかをある程度理解しているように見えます。
盾がサムへ渡される場面でも口を挟まず、穏やかに見守ります。

ピーター・パーカー / スパイダーマン
『インフィニティ・ウォー』でトニーの腕の中から消滅した後、ブルースの指パッチンによって復活します。
本人の体感ではタイタンでの戦いからほとんど時間が経っていませんが、トニーにとっては5年間です。
再会したトニーから抱きしめられることで、二人の師弟関係が完成します。
最終決戦ではインスタント・キル・モードも使用しながらガントレットを運び、サノス軍の中を走ります。
トニーの死の場面では、今度はピーターが残される側になります。
トニーが彼を救えなかった罪悪感からタイム泥棒へ戻った一方、最後にはピーターが トニーの自己犠牲を受け継ぐ側 となります。

スティーヴン・ストレンジ / ドクター・ストレンジ
『インフィニティ・ウォー』で消滅していましたが、復活後すぐにタイタン側のヒーローたちをポータルで地球へ連れてきます。
本作の作戦そのものには参加していません。しかしタイム泥棒が成立する重要な理由は、彼が前作でタイム・ストーンをサノスへ渡したことにあります。
エンシェント・ワンはその選択を聞き、未来のストレンジを信じてブルースへストーンを貸します。
最終決戦ではトニーから「今が唯一の勝利なのか」と問われても答えず、最後に指一本を立てて選択を促します。
1400万605通りの未来を見た人物が、最後まで必要な一手だけを守り続けた形です。

ワンダ・マキシモフ
ヴィジョンの死と同時期に消滅したため、復活したワンダにとってサノスへの怒りはほとんど直前の出来事です。
最終決戦では2014年のサノスへ「あなたは私からすべてを奪った」と告げますが、サノス本人にはその記憶がありません。
ワンダは単独でサノスの装甲を破壊し、身体を引き裂く寸前まで追い詰めます。サノスが味方を巻き込む無差別砲撃を命じなければ脱出できなかったほどです。
勝利後もヴィジョンは戻らず、クリントとともに失った者を悼みます。
この喪失が後の『ワンダヴィジョン』へ直接つながっていきます。

2014年のガモーラ
『インフィニティ・ウォー』でサノスに殺されたガモーラ本人が復活したわけではありません。
本作で現在へ来るのは、まだピーター・クイルと出会う直前の 2014年のガモーラ です。
未来のネビュラから、自分がサノスへ反抗し、ガーディアンズという家族を得る未来を聞きます。そしてサノス側を裏切り、2023年のネビュラを救います。
クイルと再会しても彼への記憶はなく、恋人として扱われることに戸惑います。
最終決戦後は姿を消し、クイルが彼女を探していることが示されます。
この存在によって「死者が簡単に元通りで復活する」展開を避けつつ、ガモーラの物語には新しい可能性が生まれます。

フリッガ
2013年のタイム泥棒で、未来から来たソーと再会します。
ソーが未来の息子だと早い段階で見抜き、失敗と喪失によって自分を見失っている彼を受け止めます。
この日のうちに自分が死亡する未来を、ソーは変えようとはしません。
フリッガは「誰もがなるべき自分になれるわけではない」という現実を認め、それでも自分自身であることを選ぶよう息子へ伝えます。
ソーがムジョルニアを呼び戻し、自分がまだふさわしいと確認するための精神的な支えとなります。

ハワード・スターク
1970年のキャンプ・リーハイで、未来から来た息子トニーと出会います。
本人は相手の正体を知らず、妻マリアの出産を控えた父親として不安を語ります。
トニーはこれまで父との関係に強いわだかまりを持ってきましたが、自分自身が父親になったことで、ハワードも完璧ではなく不安を抱えた一人の父だったと理解します。
別れ際にトニーから突然抱きしめられますが、その意味を知ることはありません。
トニーにとっては、長年心に残っていた父との関係へ自分なりの決着をつける時間になります。

エンシェント・ワン
2012年のニューヨーク決戦の裏で、サンクタムを守っていました。
ブルースからタイム・ストーンを求められて拒否し、ストーンを一つ時間軸から持ち出せば、その現実が危険にさらされると説明します。
この会話によって、本作の時間旅行に「過去から盗んだストーンは必ず同じ時点へ返す」というルールが加わります。
そして未来のストレンジが自らタイム・ストーンを渡したと知ると、彼の判断に意味があると考えてブルースへ協力します。
本人は未来をすべて知っているわけではありませんが、 自分が選んだ後継者の判断を信頼すること で宇宙を救う作戦の一部になります。
重要アイテム・組織
6つのインフィニティ・ストーン
スペース、マインド、リアリティ、パワー、タイム、ソウルの6つからなる、宇宙誕生以前の特異点から生まれた力です。
『インフィニティ・ウォー』ではサノスがすべてを集めて宇宙の半分の生命を消しました。本作では現在のストーンがサノスによって破壊されているため、アベンジャーズは過去の異なる時点から一時的に回収します。
ブルースがそれらを使って消滅した生命を戻し、最後にはトニーがサノス軍を消滅させます。
使用後はスティーブが元の時代へ返却します。
ナノ・ガントレット
トニー、ブルース、ロケットらが、過去から回収した6つのインフィニティ・ストーンを同時に使用するために作ったガントレットです。
アイアンマンのナノテクノロジーを応用しており、装着者の腕に合わせて形状を変化させます。
ブルースが最初に使用して消えた生命を復活させ、その後サノス軍によって奪われかけます。
最終的にはトニーのナノアーマーと同じ技術であることが、ストーンをサノスから奪う決定的な仕掛けになります。
量子世界
通常の空間よりも極端に小さい領域で、『アントマン』シリーズから存在が描かれてきました。
スコットが量子世界に取り残されている間、外では5年が経過したのに本人の体感は約5時間だったことから、本作では時間移動への入口として利用されます。
量子世界を通るだけで自由にタイムトラベルできるわけではなく、トニーが時間と位置を制御する航法を完成させることで初めて実用化されます。
インフィニティ・サーガで長く脇に存在した設定が、最終的にサノスの勝利を覆す手段になります。
ピム粒子
ハンク・ピムが開発した縮小・拡大技術の根幹となる粒子です。
量子世界へ安全に出入りするために必要であり、タイム泥棒では一人あたり往復できるだけの限られた量しか残っていません。
2012年ニューヨークでテッセラクト回収に失敗した際、トニーとスティーブは1970年キャンプ・リーハイへ移動し、当時のハンク・ピムの研究室から追加分を確保します。
世界を救う時間旅行が、スターク技術だけでなく ピムの長年守ってきた技術との組み合わせ で成立している点が重要です。
タイムスペースGPS
トニーが量子世界を利用した時間移動のために開発した小型航法装置です。
狙った時代・場所へ移動し、さらに現在へ戻るための座標制御を行います。
ブルースだけで実験した際にはスコットの年齢が変化してしまいましたが、トニーの計算によって「人間を時間の中へ通す」安定した方法が完成します。
時間移動そのもののエネルギー源はピム粒子と量子世界ですが、それを実用的な作戦へ変えたのがこの装置です。
ムジョルニア
ヘラによって破壊されたはずのソーの旧武器ですが、タイム泥棒で訪れた2013年アスガルドから一時的に持ち帰られます。
未来のソーが呼び寄せた時に応えたことで、失敗と喪失を経ても彼が「ふさわしい者」であることを証明します。
最終決戦ではスティーブが持ち上げ、雷神の力を使ってサノスと戦います。
戦いの後は、歴史を壊さないためスティーブが2013年へ返却します。
ストームブレイカー
『インフィニティ・ウォー』でソーがニダベリアのエイトリとともに作った新しい武器です。
サノスへ致命傷を与えられるほどの力を持ちますが、前作では胸を狙ったため指パッチンを止められませんでした。
本作では冒頭でサノスの首を落とし、最終決戦でもソーの主武器として使用されます。
ムジョルニアと同時に存在することで、過去のソーと現在のソーを象徴する二つの武器が並びます。
キャプテン・アメリカの盾
ヴィブラニウム製の盾で、スティーブを象徴する装備です。
『シビル・ウォー』でトニーとの決裂後に置き去りにされていましたが、本作でトニーから返されます。
最終決戦ではサノスの双刃の剣によって大きく破壊されます。それでもスティーブは壊れた盾を腕へ固定して立ち続けます。
戦いの後、老いたスティーブは別の盾をサムへ渡し、キャプテン・アメリカの象徴を次世代へ継承します。
アベンジャーズ・コンパウンド
『エイジ・オブ・ウルトロン』以降、アベンジャーズの主要拠点となっていた施設です。
指パッチン後もナターシャがここを中心に地球・宇宙の残存メンバーと連携し、タイム泥棒の研究と実行も行われます。
ブルースの指パッチン直後、2014年のサノスがサンクチュアリIIから砲撃し、施設は完全に崩壊します。
チームの拠点そのものを失った瓦礫の上で、アベンジャーズ史上最大の決戦が始まります。
サンクチュアリII
サノスの巨大母艦です。
2014年のネビュラが量子トンネルを起動したことで、サノスと軍勢を乗せたまま2023年へ移動します。
アベンジャーズ・コンパウンドを一斉砲撃し、最終決戦ではワンダからサノスを救うため味方ごと地上を砲撃します。
最後は宇宙から帰還したキャプテン・マーベルに単独で貫かれ、破壊されます。
ベネター
ガーディアンズが使用していた宇宙船で、『インフィニティ・ウォー』後はトニーとネビュラがタイタンから脱出するために使用します。
冒頭では燃料と酸素が尽き、二人が宇宙で漂流しますが、キャプテン・マーベルによって地球へ運ばれます。
タイム泥棒ではナターシャとクリントが2014年のヴォーミアへ向かう際にも利用されます。
ラストではソーがガーディアンズとともに乗り込み、宇宙へ旅立ちます。
ニュー・アスガルド
ラグナロクとサノスの襲撃を生き延びたアスガルド人が、地球のノルウェーに築いた新しい居住地です。
5年後のソーはここで引きこもり、コーグやミークとゲームや酒に囲まれた生活を送っています。
最終決戦後、ソーはヴァルキリーへ指導者の立場を託します。
『バトルロイヤル』で示された「アスガルドは場所ではなく民である」という考えが、地球上の新しい共同体として具体化したものです。
MCU的に重要なポイント
1. インフィニティ・サーガ22作品の集大成
本作は2008年の『アイアンマン』から続いてきた22作品の大きな物語を一度集約します。
過去作品の人物や場所が単なるカメオとして出るのではなく、2012年ニューヨーク、2013年アスガルド、2014年モラグ、1970年キャンプ・リーハイなどがタイム泥棒の作戦地点そのものになります。
「これまで見てきたMCUの歴史」が、最後の勝利に必要な情報へ変わる作品です。
2. サノスの指パッチンから5年間が経過する
『インフィニティ・ウォー』の敗北はすぐ元へ戻されません。
世界は半分の人口を失ったまま5年間進み、その間にモーガンのように新しく生まれた人、キャシーのように成長した人、生き残った家族の人生があります。
ブルースが消えた人々を戻しても、この5年間は維持されます。
後のMCUで社会、年齢、人間関係へ大きな影響を与える 「ブリップ」 の基盤となります。
3. 現在のインフィニティ・ストーンが破壊される
2018年のサノスは指パッチン後、ストーンを再利用されないよう6つすべてをストーン自身の力で破壊します。
そのためアベンジャーズは「今あるストーンを奪う」方法を使えず、過去から一時的に借りる必要が生まれます。
インフィニティ・サーガを動かしてきた6つのアイテムが、現在の時間軸から失われる大きな転換点です。
4. MCUに本格的な時間移動が導入される
量子世界、ピム粒子、トニーの航法技術を組み合わせることで、任意の過去へ移動できる技術が成立します。
ただし過去を書き換えて現在を上書きする方式ではなく、過去へ介入すれば分岐が生まれる考え方が示されます。
この時間移動と分岐世界の概念は、後のマルチバースを扱う作品群を理解するうえでも重要な土台になります。
5. 2012年のロキがテッセラクトを持って逃走する
本来ならニューヨーク決戦後にアスガルドへ連行されるロキが、未来のアベンジャーズの介入によってテッセラクトを拾い、逃走します。
この出来事は本編のテッセラクト回収失敗だけでなく、ドラマ『ロキ』の出発点になります。
タイム泥棒が最も明確に「本来とは違う分岐」を生んだ場面の一つです。
6. 2014年のガモーラが2023年へ移動する
サノスに殺された2018年のガモーラは復活しません。
代わりに2014年のガモーラがサノス軍とともに2023年へ来て、その後サノスを裏切ります。
彼女にはクイルやガーディアンズとの思い出がありません。
この状態が『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』へ続くガモーラとクイルの関係を大きく変えます。
7. 2014年のサノスと軍勢が消滅する
最終決戦でトニーが指を鳴らし、2014年から来たサノスとその軍勢を消滅させます。
これは2018年のサノスの過去を「書き換えた」わけではありません。2023年の世界ではすでに指パッチンと5年間が実際に起きています。
2014年から分岐した側ではサノスが未来へ移動したため、その後の歴史が本来とは異なる可能性が生まれます。
本作の時間旅行ルールを理解する代表的な出来事です。
8. ナターシャ・ロマノフが死亡する
オリジナル・アベンジャーズの一人であるブラック・ウィドウが、ソウル・ストーンを得るためヴォーミアで死亡します。
ブルースの指パッチンでも戻すことはできず、ソウル・ストーンの交換が不可逆であることが示されます。
彼女の死は後の『ブラック・ウィドウ』や、エレーナ・ベロワとクリントの物語にも影響します。
9. トニー・スタークが死亡する
MCU第1作の主人公であり、アベンジャーズ結成以降も物語の中心にいたトニーが、サノス軍を消滅させるため死亡します。
ウルトロン、ソコヴィア、シビル・ウォー、サノスへの恐怖など、彼が長く抱えてきた「自分の力で未来へ備えなければならない」という問題は、最後に自分の命を使って未来を守る形で終わります。
MCUにおける一つの時代の明確な終点です。
10. スティーブ・ロジャースがキャプテン・アメリカを引退する
ストーン返却後、スティーブは過去へ残ってペギーと人生を過ごし、老いた姿で2023年に現れます。
彼は今後も若いキャプテン・アメリカとして活動するのではなく、役目を終えます。
そして盾をサム・ウィルソンへ渡し、キャプテン・アメリカという象徴が個人から次世代へ継承されます。
11. スティーブがムジョルニアを使う
『エイジ・オブ・ウルトロン』でわずかに動かした伏線が、本作で完全に回収されます。
スティーブがムジョルニアを持ち上げられることは、彼がオーディンの魔法における「ふさわしい者」であることを意味します。
キャプテン・アメリカの精神性を、長年の別シリーズであるソーの象徴が認める、クロスオーバーならではの到達点です。
12. ブルースとハルクが統合される
長年「ブルースかハルクか」という対立で描かれてきた二つの人格・身体が、5年間の研究によって統合されます。
本作以降のブルースは、以前のように怒るたび別人格のハルクへ変身する状態ではありません。
『インクレディブル・ハルク』から続く主人公の問題に、大きな変化が起きています。
13. ソーがアスガルド王の立場を離れる
ソーはヴァルキリーへニュー・アスガルドを託し、ガーディアンズと宇宙へ出ます。
オーディンの後継者として「王になること」が長く彼の物語にありましたが、本作で自分が必ずしも王である必要はないと判断します。
この状態が次のソーの物語へつながります。
14. ヴァルキリーがニュー・アスガルドの指導者になる
『バトルロイヤル』で過去から逃げていたヴァルキリーは、ニュー・アスガルドで民を支える立場になっています。
本作の最後、ソーから正式に国を託されます。
アスガルドの王統がオーディンの血筋だけで続くのではなく、実際に民を導いてきた人物へ移る重要な変化です。
15. ピーター・パーカーたちが復活する
ピーター、ドクター・ストレンジ、ティ・チャラ、シュリ、ワンダ、サム、バッキー、ガーディアンズら、『インフィニティ・ウォー』で消滅した人物たちがブルースの指パッチンで復活します。
彼らの体感では消滅からほとんど時間が経っていませんが、世界側には5年が経っています。
この時間差が後の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』などで日常レベルの問題としても描かれます。
16. キャプテン・マーベルがアベンジャーズ本隊と合流する
1990年代から宇宙で活動していたキャロルが、フューリーの救難信号をきっかけにアベンジャーズと本格的に接触します。
トニー救出、サノス討伐、最終決戦でのサンクチュアリII破壊など、宇宙規模の戦力として大きな役割を果たします。
地球のヒーローチームだったアベンジャーズが、より広い宇宙ネットワークの一部へ変化していることも示します。
17. オリジナル・アベンジャーズ6人の時代が終わる
2012年の初代メンバー6人は、全員が本作で大きな転換を迎えます。
トニーとナターシャは死亡。
スティーブは引退。
ソーは王位を離れて宇宙へ。
ブルースはハルクと統合。
クリントは家族のもとへ戻ります。
「アベンジャーズ」という名前は残っても、2012年の6人が同じチームとして戦う時代は本作で終わります。
18. 「アベンジャーズ、アッセンブル」が初めて完全に発せられる
MCUでは長く象徴的に扱われてきた言葉ですが、スティーブが画面上で「アベンジャーズ、アッセンブル」と完全に号令するのはこの最終決戦です。
しかもその対象は初代6人だけではなく、地球、宇宙、ワカンダ、アスガルド、魔術世界などから集まった史上最大の連合です。
シリーズ全体の集大成を一言で表す場面になっています。
作品のテーマ
喪失を消すのではなく、抱えて前へ進む
『エンドゲーム』の最大のテーマは、 過去をなかったことにするのではなく、失ったものを抱えたまま未来を選ぶこと です。
タイムトラベルが登場するため、「過去へ戻ってサノスを止めればすべて元通り」と考えたくなります。しかし本作はその方法を使いません。
トニーにはモーガンが生まれ、キャシーは5年成長し、生き残った人々には5年分の人生があります。その時間を消さず、失われた人々だけを現在へ戻します。
ナターシャとトニーの死も取り消されません。
勝利とは、すべてを元に戻すことではなく、 変わってしまった世界でも未来を作れる状態を取り戻すこと として描かれます。
「失敗した自分」とどう向き合うか
生き残ったヒーローたちは、全員がサノスへの敗北を別々の形で抱えています。
ソーは自分を責めて引きこもり、クリントは怒りを犯罪者へ向け、ナターシャはアベンジャーズへしがみつき、スティーブは人々へ前進を語りながら自分も過去から離れられません。
トニーだけは家庭を築きますが、ピーターを救えなかった記憶は残っています。
本作は「失敗したから以前の自分へ戻る」のではなく、失敗後に別の自分になったまま再び立ち上がることを描きます。
ソーが外見を元へ戻さなくてもムジョルニアに選ばれることは、その象徴です。
家族――血縁だけではない「帰る場所」
本作では多くの人物の行動原理が家族です。
トニーにはペッパーとモーガン。
クリントにはローラと子どもたち。
ナターシャには血縁ではないアベンジャーズ。
ソーには亡くなった母フリッガ。
ネビュラには、支配者だったサノスではなく、自分で選び直したガモーラとの姉妹関係があります。
サノスもガモーラを愛していると考えますが、その愛は相手を犠牲にして自分の目的を達成するものです。
アベンジャーズ側の家族は、逆に 自分を犠牲にして相手を生かそうとする関係 として描かれます。
ヴォーミアのナターシャとクリントが、その対比を最も明確に示します。
ヒーローにとっての「終わり」
タイトルの「Endgame」はサノスとの最終戦だけを意味しません。
トニー、スティーブ、ナターシャ、ソー、ブルース、クリントにとって、長く続けてきた生き方の終わりが描かれます。
トニーは命を使って戦いを終えます。
スティーブは戦う役目から離れます。
ナターシャは家族を救うため命を差し出します。
ソーは王であるべきという人生から離れます。
ブルースはハルクとの戦争を終わらせます。
クリントはローニンをやめ、家族へ帰ります。
「敵を倒して次の任務へ向かう」のではなく、 ヒーロー自身にも終わり方と次の人生がある ことを描いた作品です。
トニーとスティーブ――未来へ渡す者と、失った時間を取り戻す者
本作の最後は、MCUを長く代表してきた二人に正反対の結末を与えます。
トニーは5年間でようやく家庭を得ました。それでも未来を守るため、自分の残りの時間を犠牲にします。
スティーブは人生のほとんどを他人のために使い、約70年分の自分の時間を失いました。最後には任務を終え、過去へ残って自分の人生を取り戻します。
一人は 未来へ命を渡し 、一人は 過去に失った人生を生きる 。
どちらも逃避ではなく、それぞれの人物が長い物語の末にたどり着いた答えです。
まとめ
『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、サノスに勝つことだけを目的とした作品ではありません。
『インフィニティ・ウォー』で一度完全に敗北したヒーローたちが、5年間の喪失を経験し、それでももう一度集まり、これまでのMCUの歴史そのものをたどって未来を取り戻す物語です。
6つのインフィニティ・ストーン、量子世界、ムジョルニア、テッセラクト、ロキのセプター、アスガルド、キャンプ・リーハイなど、過去21作品で積み上げられた要素が「思い出」ではなく、最終作戦に必要な部品として機能します。
そして勝利には、ナターシャとトニーという大きな犠牲が必要でした。スティーブは盾をサムへ託し、ソーは王位を離れ、オリジナル・アベンジャーズの時代も終わります。
それでも彼らが守った未来は続きます。
『エンドゲーム』はインフィニティ・サーガの集大成であり、「過去を消すのではなく、すべてを背負ったまま次の世代へ未来を渡す」ための終着点です。

